劇場公開日 2022年11月18日

「自然とともに生きた少女の残酷で幸福な物語」ザリガニの鳴くところ sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0自然とともに生きた少女の残酷で幸福な物語

2023年3月6日
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鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

原作小説は読んでない上でのコメントです。

この作品はカイアという沼地で育った女性の半生を描いた作品でした。

カイアは幼い頃に家族が離散し、生家である沼地に残されたことで社会性がないまま育ってしまった。前半は幼い少女が一人で苦労して生計を立てる姿に心打たれました。しかし、成長するにつれ、初恋や本を出版するなど心地いい場面もありましたが、目を覆いたくなるシーンも増えました。ただ、思春期の感情に振り回されるシーンを生々しく描写したことで、頼る人がいない孤独感や信じてしまう一途な純真さも伝わってきました。こういった境遇や事情が伝わったからこそ、ただの殺人事件という薄っぺらいものにならなかったような気がします。

本作は受け取り手によって見方が大きく変わる作品だと思います。見終わった直後、カイアの軽率な行動や身勝手さが招いたことに納得がいきませんでした。でも、思い返せば、カイアにとって生きるために恐怖を消し、生きるために嘘をつき、生きていくために生涯隠し通しただけで、全ては生きていくための行動だったと思います。そこに後悔はないし、その後も必死に行きたカイアは強い女性だと感じました。

やはり、善悪で片付けられない作品は難しいです。

sumichiyo