劇場公開日 2022年11月18日

「法廷ミステリーの描き方が変わった」ザリガニの鳴くところ Golgo14さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0法廷ミステリーの描き方が変わった

2022年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

法廷ミステリーと言えば、従来は裁判の中でドンドン新しい証拠、あるいは違った切り口の考え方が出てきて、裁判の形勢が変わって行くというパターンが多かった。
古くは『12人の怒れる男』、最近では『コリーニ事件』など。
この作品では裁判シーンが少なく、また新事実の披瀝さえもない。
にもかかわらず時間がかかったとはいえ形勢が逆転した。

本作品では2つの事が暗示されている。

1つは陪審員制度(日本では裁判員制度)の危うさ、ひいては司法制度そのものの危うさ。
陪審員(裁判員)は目の前の事実に着目しながらも、噂・世論・差別・先入観・忖度など、最近は同調圧力と表現されている物で冤罪を引き起こす可能性を孕んでいる。
マスコミによる誤った誘導や最近ではSNSの広がりによってなおさらその傾向は強まっている。
またその逆に本来有罪であるべき者を同様の要素で無罪放免としてしまう可能性もある。
「O・J・シンプソン事件」などはその典型的な例であろう。

2つ目は主人公の女性のように小児期に家族に遺棄されても、一人で生き延び、なおかつ学者・研究者を超越する知識を有するまでになる。
そんなことが現実にあるのだろうかと思うが、決して無いとは言い切れない。
既成概念を取っ払って行かないとこれからの社会には対応できないのではないかと思わされた。

それにしても被害者は事故死なのか殺害されたのか?
どちらにしても如何にして死に至ったのか?
手がかりは本編の中にあるのだろうから、もう一度見てみたいと思う作品である。

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Golgo14