「沼地の娘の湿地帯」ザリガニの鳴くところ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
沼地の娘の湿地帯
動物学者のディリーア・オーエンズが69歳で出した処女長編フィクション小説が原作。それに惚れて、映画製作契約を申し出たのはリング・オブ・ファイヤーで有名なジョニー・キャッシュの自伝映画、ウォーク・ザ・ラインでオスカーに輝いている女優のリース・ウィーザースプーン。監督はやはり女性監督のオリヴィア・ニューマン。
おまけにエンディングテーマ曲はカントリーの歌姫、テイラー・スイフトとオール女性。
プロミシングヤングウーマンのようなズシンと重い映画でした。
1952年のノースカロライナ州の沿岸部が舞台。アメリカ大陸に初めてヨーロッパ人が上陸し、ネイティブアメリカンと対峙した土地。
原題は Where The Crawdads Sing。
ザリガニは鳴かないんじゃないの?
特定外来種ミシシッピーアカミミガメも出てきた。ワニも気持ちよさそうに半身浴。
映像がすごくキレイ。
ムール貝は海の貝。
沼地の娘?
淡水なのか塩水なのか?
気になって仕方ない。
調べたら、沼地のロケはルイジアナ州の Blue Bayou の舞台だったミシシッピー川下流の入り江。大きな塩水湖があるあたり。
Watchtower の下に町のボンボンのチェイスの死体が発見されて、沼地にひとりで住む若い女が容疑者として逮捕される。
死体に群がるザリガニの映像が見られるかと思ったが、なかった。町の老弁護士が弁護を買って出てくれて、女の過去が次第に明かされる展開。雑貨店の黒人夫婦以外、ヒトから隔絶した生活を送るカイアだったが、入り江にボートを出して、一番仲の良かった兄のジェイブの釣り仲間のテイトに再会する。テイトは学校に行かなかったカイアに読み書きを教え、図鑑を与え、自然生物の精緻な絵を評価し、出版社も紹介してくれた。その才能を開花させてゆくカイア。ワシと白鳥の羽の交換日記のような初々しい清らかなお付き合い。そして湖に飛び込んで泳ぐカイアのワイルドな美しさ。湖で抱き合う美しい男女のシーンはとてもいい。テイトのボタンダウンのシャツの匂いを嗅ぐカイア。いとおしさが溢れる。
生物学者志望のテイトは遠くの大学に進学。絶対帰ってくるといいながら帰って来なかった。約束の場所の夕陽は悲しいほどに美しかった。花火もひとりで見た。とうとう夜があける。裏切られたと思い込んだカイアにちょっかいを出してきたチェイス。マッチョのイギリス人俳優。テイトとは対照的。チェイスに湿地帯を開発されてしまうカイア。チェイスは結局父親と同じDV野郎たった。決定的なのはレイプと本の印税で綺麗にリフォームしたカイアの家をめちゃくちゃに。大事な絵や標本もぐちゃぐちゃ。ストーカー行為に怯えるカイア。カイアの縄張りに土足でズカズカ踏み込んだチェイスにバチが当たった。
出版社との打ち合わせに行った日のアリバイはかなり強力だった。
いつの間にか戻ってきていたテイトの毛糸の帽子の赤い繊維が証拠になってテイトが捕まってしまうのか?
テイトとチェイスの喧嘩の仲裁をして、毛糸の帽子を自分のデニムのオーバーオールに擦り付けていたジャンピン?
警察官になって戻ってきた兄のジェフがカイアを護るためにチェイスを殺害したのか?
陪審員たちが沼地の娘への蔑視や先入観に囚われずに正しい判断をしてくれるのか?
しかし、
細工された本に封印されていたサクラ貝のネックレス。
貝愛の秘密。
ガーン😱
カイアが最後に見た夢。去って行った母親が戻って来た儚い夢。
自然児だったカイアの女一代記。
一途で頑固なカイアへの畏敬。
カイアって名前。川崎さんちの麻世君の奥さんもカミツキガメ並みに獰猛でタフだった。
原作のディリーア・オーエンズ。長く添った同じ動物学者の夫と熟年離婚している。そして、この小説を書いた。
何があったのか劇場。
気になって仕方ない。
殺す代わりに小説を書いた?
ベストセラーになって、印税、映画契約金など全部でいくらになったのか?
元・旦那は悔しくて寝れないね。
2022.12.1 追記
二回目を昨夜観ました。気になった映画は何回も観た方が自分のためになると思います。動機は雑貨屋のジャンピンが怪しいと思ったからです。戻ってきたテイトが桟橋でカイアの痴態を友達に話し笑いものにするチェイスとつかみあいになる場面。ジャンピンが中に入り止めます。テイトの赤いニット帽を拾って自分のオーバーオールでホコリを拭く場面がありました。年取ったテイトがカイアの死んだあとにめくる日記にはサクラ貝(イタヤ貝)を首にかけたチェイスの絵があって、カイアが捕食する相手としたことが明らかにされているので、カイアが深夜の一時間の間にやったんだということになりますが、やはりカイアひとりでは難しい気がしました。テイトの驚愕した表情からはテイトは関与していないことは明らかですが、カイアを実の娘のように思っていたジャンピンと兄のジェイクがカイアのアリバイが成立する時間に合わせて共謀した可能性は充分にあると思いました。ジャンピンは墓場まで持っていったんでしょう。この映画は女性と黒人に寄った作りが明らかですが、ノースカロライナが舞台であることから、ネイティブアメリカンに対する動物学者の作者の思いも感じられました。アメリカザリガニは日本では外来種です。カイアは町の人間からすればよそ者だと弁護士のおじさんも法廷で明言していましたので、人間の都合で連れてこられたり、排除される外来種に対する同情やアメリカ大陸のネイティブアメリカンにとっては侵略者であるヨーロッパ人はまさしく外来種ということになりますから、なかなか深い暗喩がこの映画には込められていると思いました。そこのところが世界中で売れた要因だと思います。アメリカの混迷はまだまだ続きそうですね。
コメントありがとうございます。
原作に忠実に作られていたんですね。
実は、原作が日本で発売された頃、書店で手に取ったことがあるものの、分厚いので読まなかったのです・・・(笑)
誰が殺したか?は、本作の主題ではない、と私は勝手に自分を納得させています。
カールⅢ世さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
「 33番目/25冊 」、なのですね !
確かにもう直ぐお手元に 📙
気になって利用している某図書館にログインしてみたところ、所蔵数4冊でした。図書館の利用者数、かなり違いそうですね 😅
小説の執筆に取り組みたいとの著者の記事を目にしたのですが、気長に待ちたいと思っています。日本語訳本しか読めませんが 😆
カールⅢ世さん
8月中旬に図書館より連絡メールか届き、数日前にやっと読み終える事が出来ました 📙
作中で詩が効果的に使われており、つい本に手が伸びる、久々に面白く読めた1冊となりました。
カールⅢ世さんはもう読まれましたか 📙 ?
カール様コメントありがとうございます。
外来種に関する意見は完全に同意します。彼らに罪は有りません。
原作が今、猛烈に読みたいのです。父親殺害説は表記されてるのか匂わせなのか?
殺害だったら陳腐になっちゃう。私のレビューは。
とにかく想像の余地が多いんです。
いい映画の条件かな?
カールⅢ世さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
カールⅢ世さんも図書館を利用されているのですね 📙
基本的に常に何かしらの本を借りていますが、つい映画鑑賞( 録画鑑賞多めながら )に走り、読み切れないまま返却( 面白く感じる本のみ読破 😆 )する事多発中の私です。
カールⅢ世さんから頂いたコメントで、原作を図書館に予約していた事に気付きました(笑)朝刊の広告を見て以前予約していたようで、私は54/104でした。
図書館からのお知らせメールが今から楽しみです。アカデミー賞の行方にも期待しています。
カールⅢ世さん
カールⅢ世さんの追記での考察、あの暴力的なチェイスを意のままにするのはかなり難易度が高いでしょうから、色々と頭を巡らせてしまいますよね。
アカデミー賞受賞、期待しています。
カメの絵が出てきたとき、カメの甲羅はあばら骨なんだよな~などと、どこかにあばら骨っぽい記述がないか探してみたりしました。でも、甲羅もあばら骨も英語がわかんなくて・・・
今晩は。
私が読んだ資料には、ディリーア・オーエンズは”自分の人生を顧みる”と言う意味で今作を出版したとあります。(真偽は不明です。)
今作が、心に響くのは親や兄たち、そして多くの町の人達から見捨てられつつも、一人の少女が自分の人生を自ら切り開き、人としてやるべきことをキチンと行い、幸せな人生を送った(刑事訴訟法としては、問題がありますが・・。)事が描かれている事だと、私は思いました。では。
ー 日本サッカーのまさかの敗戦に立ち上がれないNOBUでした・・。-