「「誰も私を見なかった」」ザリガニの鳴くところ Maryさんの映画レビュー(感想・評価)
「誰も私を見なかった」
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カイアという女がいた。湿地に暮らす彼女に家族が居なくなったのは随分昔のこと。暴力を振るう戦争帰りの父親がすべてを壊し、母、兄弟、遂には父親も彼女を見捨てた。カイアを見ていたのは湿地だけ、カイアを知ってるのも湿地だけ。10余年たった独りで湿地に引きこもって生きてきた。
そんなカイアの魅力に溺れる男がふたり。幼い頃、まだ家族がいた頃からカイアを気にかけていた優しいテイト。カイアもテイトも湿地を愛していたので意気投合する。しかし、湿地には何も無い、仕事がない…と、彼は去る。そこへやって来るのが町一番のクォーターバック、チェイス。いわゆるカーストの頂点にいる町の人気者。こいつがドヤ顔でハーモニカを吹き鳴らし、カイアを口説く。でも実はこのハーモニカ男には婚約者がいた。町で鉢合わせてその事実を知ったカイアは、自分勝手で暴力的なチェイスに追われるようになる。「違うんだ、説明してやる」何も違うくはない。カイアは知っている、DV男の生態を。カイアは知っている、湿地で生き抜く術を。ホタルの光が2種類あるように、カマキリのメスはオスを食べるように、自然に生きるものたちは、ただ生き抜くために。そこに倫理はなく、罪もない。部屋いっぱいの鳥の羽根、果たして彼女は学者か魔女か…?遺された彼女の絵日記には、湿地の生き物たちが。危なかったら「ザリガニの鳴くところ」まで。カイアはそうやって生きた。
原作者のディーリア・オーウェンズは生物学者。美しくミステリアスなノースカロライナの湿地と言葉、それだけで価値があると思う。そして実は法廷シーンにカメオ出演しているらしい。かわいい。
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