「昆虫は道徳心を持っていない。自然界に悪意はない。」ザリガニの鳴くところ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
昆虫は道徳心を持っていない。自然界に悪意はない。
「ザリガニの鳴くところ」とは?ザリガニって鳴く?何の比喩?
その疑問は、いくつかの考察があるのでそちらに譲るが、個人的には「ザリガニの鳴き声ほどひっそりとした、人知れぬ場所」が、外敵からの逃げ場所ってことだろうなとは感じた。
もちろん外敵とは猛獣の類ではない。人間だ。それも、身近にいる親であったり、友達を装って近づいてきたり。湿地でひとり暮らすカイヤにとっては外の世界などどうでもいいのだが、その外の世界がカイヤを放っておいてはくれないのが因果なもの。殺人事件が映画の発端なので、その事件にカイヤが巻き込まれる展開であるのは当然なのだが、最後の最後に、その結末を用意するとはね。美しい愛の物語で終わると思いきや、カイヤ自身が自然界の一部として生きていたことを、うっかりと忘れていた。それをまるで冷や水を掛けられたように最後にひっくり返された気分。でも、それは決して、裏切られた気分ではなく、一種の潔さのようなものが残った。
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