劇場公開日 2022年11月18日

「綺麗と美しいは違う」ザリガニの鳴くところ ぶたぶたさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0綺麗と美しいは違う

2022年11月23日
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原作未読、あくまで映画内の情報のみの感想です。

原作がベストセラーということで、映像化に重きを置いて所々描写を端折った感がありますがそれはさて置き、映るもの全てがとにかく小綺麗過ぎて終始気になってしまいました。

主人公は文字通り沼地でその日暮らし、毎日貝を拾い集めて主食はとうもろこし粉。そんな劣悪な環境でも髪のキューティクルは保持され日焼け肌荒れとも無縁……というのは彼女の生得的な体質だと言えなくもなく、何より美男美女の恋愛ドラマがあるのでギリギリOKですが、それでもシーンが変わる度にばっちりスタイリングされた衣装を纏う必要は?というか、資本は?
翻って学校に行くシーンだけわざわざボロ衣装で顔も当てつけのように泥だらけにしたりと、なんともインダストリアルな美醜のコントロールに見えてしまう。
※いくらなんでも裸足というのはやり過ぎじゃないですかね。人生難易度インフェルノモードの『少女ムシェット』ですら木靴は履けていたのに。

恋仲になる男も貧乏設定ですが、同じく小綺麗過ぎる。整髪料を撫でつけ、パリッとしたインナー白Tシャツに無骨なワークジャケットを着こなす絵に描いたようなハンサム。私が夏場愛用している、今年3年目に突入したヘインズ赤パックTシャツの首元なんて見るも無惨にヨレヨレですよ。現実、貧しさというのはまず視覚から表れるものなんです(だからみんな金持ちになりたがる)。

また、この映画は最近たまに見かけるようになった無煙映画でもあります。50〜60年代のアメリカの片田舎で、登場人物はおろか道ゆく人すら誰も煙草を吸っていないなんてあり得ないですが、喫煙は絵面が汚いので綺麗な映画には不要なんでしょう(煙草を買うシーンだけは辛うじてありますが、パッケージも写さない徹底振り)。

おそらく、主人公を通して描きたかったのは宣伝文句の「美しい自然」ではなく「野生」でしょう。
裸足は野生の象徴で、10代半ばを境に激しく入れ替わる衣装はオスを引き寄せるための擬態にも見えるし、動植物への異常な興味は生存本能からくる知恵とも言えなくもない。
そのテーマがあるのならば、人工的で作為的な画面はどうしてもノイズになってしまう。
キャラクターも良い人は知的な人格者、悪い奴はふしだらで暴力的、老弁護士は清貧で大衆は排他的。とてもモダンな道徳観で、自然や野生とは縁遠いものです(だからこそ、あの終わり方だとも言えますが)。

成功が約束された期待値の高い作品なので、美しいとされるものしか見せたくない気持ちは分かります。が、貧しく愚かで汚いものにも美しさは宿るし、その部分を表現しないと本作のウリである「衝撃のラスト」に正しく繋がらないのではないかと思いました。

ぶたぶた