「王道の法廷劇と、田舎のザリガニ」ザリガニの鳴くところ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
王道の法廷劇と、田舎のザリガニ
基本ネタに触れないと評価できないタイプの映画なのでご了承ください↓
なんか見覚えがある気がする語りの構造なんだけど…何の映画か思い出せない。
ひとつの語りが二重の側面を持っているとこよが。なんだっけなー。「ビューティフル・マインド」あたりかな?
とにかく1回で二度美味しいって手法なので基本的にめちゃくちゃ効率がいい…はずなんだけど。
まず、アメリカ映画なのに日常のアシが車じゃなくボートだってのが新鮮。
湿地帯の中に家があるからどこへ行くにも基本はボート。こういう土地って実際あるんでしょうかねえ。
湿地の娘というのは、そんな土地にしか住めない貧しい人って蔑称なんでしょうが、実はそこに豊かな資産があって、主人公だけがそこからら自分の武器を得ていく、つまりは湿地の化身となる。
そのあたり、彼女だけが湿地にとどまり、つらい目に遭いながらもサバイブしていく過程を見ることで自然に理解することができます。
ただ、映画的な作劇としてはもっとできたんではと思う部分もあったりはしました。タイトルの「ザリガニの鳴くところ」が限定的な場所であるかのように示しながら最終的にもっと広い意味だったりするのがどうもスッキリしない感じ。ここはおそらく原作小説では気にならないのかな?
それから最大の問題は、一見「アラバマ物語」的な無実の罪を着せられた弱者がそれを晴らそうとする王道の法廷劇かのように見せながら実は違うところに着地するという構成。
こういう構成だと、ラストに至るまでややパンチの弱い王道になってしまわざるを得ないという問題が出てしまう。
事件の真相そのものが伏せられたままクライマックスを迎えるため、なんかふわっと食い足りない感じがしてしまう。
構造的に避けられないので仕方ないですが、ラストにひとひねりある作品の陥りやすい罠だなーという気持ち。
あと街の人々と比べて圧倒的に世間知らずで純真な主人公の心の軌跡をたどっていくので、オチがわかるまではややストレートすぎると感じる場面もありました。