「家族全員から打ち捨てられた少女」ザリガニの鳴くところ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
家族全員から打ち捨てられた少女
湿地のさまざまな動植物が、目の前に生き生きとして存在する。原作を読んでいる時は、頭の中で想像していたが、その想像を上回る映像がスクリーンに映し出される。生物多様性の宝庫となっている湿地の美しい風景を余すことなく堪能できる。
法廷シーンでは、デヴィッド・ストラザーンが演じるトム弁護士が、検察側の証人が持つ偏見と印象だけの曖昧な記憶を、巧みに反証して法廷の流れを変えていく。そして、最終弁論では、陪審員に向かって滔々と語る。
「湿地の少女という偏見は捨てて、法廷で示された事実だけを基に公平に判断をお願いしたい」
原作を読んでいて、真相がわかった時、呆然としてしまって、その箇所を何度も読み返したり、伏線の張られた箇所を遡って探したりした。映像化されても、衝撃は変わらない。観客の意識はある方向に巧みに誘導されるし、あのタイミングで聞かされるとは夢にも思わない。
湿地に家族全員から打ち捨てられた少女を全力で応援したくなる。そんな物語でございます。
補足
オスを食べるホタルは、北米に生息するフォトゥリス属のメスで、他の種の蛍の明滅を擬態しておびき寄せるらしい。
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