「まさか今の映画でロイ・フラーを見られるとは…」キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱 ケンイチさんの映画レビュー(感想・評価)
まさか今の映画でロイ・フラーを見られるとは…
アニャ・テイラー=ジョイの過去作チェック7本目
恥ずかしながら私、もういい歳なのにキュリー夫人の伝記を読んだことがなかった…名前くらいしか知らなかった…
キュリー夫人の伝記って小学校の図書室とか学級文庫みたいなところに、二宮尊徳とか野口英世とかエジソンとかコロンブスとかナイチンゲールとか、そんなラインナップの中に必ずありますよね
だから小学生でも名前は必ず知ってる
でも私はこれまで1mmも伝記を読む気にならなかった
二宮尊徳は校庭の銅像で一目瞭然、苦学して出世した人の代表じゃないですか
野口英世は偉いお医者さん、エジソンは世界一の発明家、コロンブスは新大陸を発見した探検家、ナイチンゲールは一番最初の看護婦さん
この人達が立派な人だということは、子供でも一発でわかるじゃないですか
でもキュリー夫人は何した人なのか全然ピンと来ない
ていうか、アニャが出演してなかったら本作も絶対に見なかった作品ですよ
私が今までまったく興味を持てなかったキュリー夫人の伝記映画…これが私にとっては超名作でした
キュリー夫人ってちょっとあり得ないくらいの偉人だし、ちょっとあり得ないくらい劇的な人生を送った人なんですね
女性で初めてノーベル賞を取った人だし、人類で初めてノーベル賞を2回取った人だし、現在までにノーベル賞を2回取った唯一の女性だし、夫もノーベル賞を取った人だし、娘もノーベル賞を取ったし、婿もノーベル賞を取ってる
まあ要するに、女性に限らず歴史上もっとも頭いい人と言っていいくらいの業績はあるわけですよ
さらに科学者としての功績を凌駕するほどドラマティックな人生
鑑賞後、即座にネットでキュリー夫人をバババーッと調べたのですが、とても1本の映画に収まるスケールの人生じゃないんですよ
本作はむしろよくここまで見事に1本の映画として仕上げたなぁと、改めて舌を巻きました
キュリー夫人の伝記、小学生だとチト早いかもしれないけど、高校生くらいで読書感想文の指定図書として全員強制的に読ませてOKなレベルだと思いました
昔のことですから当然、女性の生き方として超一流の研究者・科学者をやっていくには諸々の障害があります
そもそも超天才で頭良すぎるので、一般人ばかりでなく知識人でも倫理観や価値観を合わせづらいということはあったでしょう
この映画では、旦那さんがホントいい人で、キュリー夫人のアイデンティティから切り離せない存在
いつまでたっても彼女が「キュリー夫人」、つまりキュリーさんの奥さんと呼ばれるのか分かる気もしますし、このセンス無さ気な邦題もちょっと許せます
そもそもこの映画、わりと早い段階でロイ・フラーが出てきて、もうその時点でガツーンとやられちゃったんですよ
ロイ・フラーは個人的に以前、ネットで調べまくったことがあったんです
まさか今の映画でロイ・フラーを見られるとは…
ロイ・フラーというのはザックリ100年前のパリのアートダンサーで、ジュディ・オングの「魅せられて」の元ネタですよ(憶測)
彼女のパフォーマンスはロートレックにインスピレーションを与えたばかりではなく、確か最初期の映画(エジソンとかリュミエール兄弟とか)のモチーフになってますよ
ロイ・フラーを登場させるというのは映画人として意外にチャレンジングな試みだったのでは?
そしてロイ・フラー以外にもエッフェル塔、自転車、自動車、降霊会、サマリテーヌ、第一次世界大戦等々、当時のフランスの時代性を象徴的に示すモチーフが取り扱われているし、原爆や原発事故などキュリー夫人が研究した放射能の及ぼす悪影響についてもきっちり取り扱われていて、伝記映画としてのクオリティが頭抜けてる印象
さらに主演のロザムンド・パイク(1979年生、公開時41歳)の演技は圧巻!
この映画、イギリス映画だからか、そんなにヒットも評価もされてないような気がしますが、個人的にはかなり高く評価しますよ
さてお目当てのアニャ・テイラー=ジョイ(1996年生、公開時23歳)は、キュリー夫人の娘の役なんですが、お顔がロザムンド・パイクと全然違う系統なので、とても母娘に見えない…
客観的にはミスキャストですが、彼女のお陰で本作を見ることができ、キュリー夫人の人生を知ることができたのでプラスマイナスゼロってことにしておきます