そばかすのレビュー・感想・評価
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恋せぬふたり 劇場版
アロマンティック・アセクシャルのことはNHKのよるドラ「恋せぬふたり」(岸井ゆきの&高橋一生)で予習済だったので、そこのところはすんなり。シンデレラのデジタル紙芝居、自分からヤバいと思って途中でやめてしまって残念。続きを最期まで観たかった。保育園の上司は春日さん。そばかすコンビでした。
前田敦子が市会議員候補の娘で元AV女優で、蘇畑佳純の中学時代の同級生世永真帆役。砂浜にシックなワンピースにサングラスで登場。
いよっ、待ってました。
気が合う女友達。一緒に住むマンションの内覧をしたのに、元カレとよりを戻してのドタキャンはNHKの夜ドラとまんま同じ展開。
元AV女優はちと似合わないんですが、コメディなんで仕方ない。オヤジにキレる街頭演説のシーンとってもよかったです。狭い町で娘が元AV女優の市会議員候補は当選確実?低~い投票率が上がることは間違いないですな。
伊藤万里華はかすみの妹で5ヶ月ぐらいの妊婦役。下腹に手を当てて、触り過ぎの演技が気になった。ちょっと!ソコはもうオマタでしょうよ!
ラブホのライター持ち帰るおバカな旦那にキレて、マシンガンのような立て板に水のセリフ回し。
旦那役は恋せぬふたりにも出てた。
シアター内に笑い声がポツポツと沸き起こるほっこりホームコメディでした。
冒頭の合コンで黙々と食べてたのに帰りにラーメン&餃子&サービスの半熟煮卵。合コンの次の日、コールセンターの屋上で7倍サイテー男だったといってたのはぎぃ子?
このところ気になってる女優さん。
なかなかのカメレオンぶり。
お見合いの相手が煮卵サービスしてくれたラーメン店の青年。好きな食べ物は和食全般ですなんて言ってて、実は全国ラーメン食べ歩きが趣味なんて、一本スジが通っていて真面目だったのに可哀想でしたね。
三浦透子の無愛想な謎めいた表情はこの設定に鉄板でした。
“普通”という無言の暴力
主人公の蘇畑(三浦透子)はアセクシャル、つまり他者に対して恋愛感情を持たない人という設定。
だが彼女はアラサー。
結婚しろと周りはうるさい。
それで彼女は、何かと周囲とぶつかってしまう。
それは、異性を好きになって当たり前、結婚して当たり前という“普通の”価値観との摩擦でもある。
そう、蘇畑を苦しめるのは、“普通”という価値観だ。
“普通”結婚するべき、恋愛するべき。
だって結婚は女性の幸せ。だから王子様を見つけましょう。…
社会に溢れている“普通”という価値観が、無言の暴力となって彼女を傷つけている。
それでも、蘇畑を新しい仕事に誘った八代(前原晃)や再開した中学の同級生の真帆(前田敦子)、父親(三宅弘城)など彼女に理解を示す人はいる。
さて、この映画の男性の描かれ方に注目したい。
冒頭の飲み会の男性は、一緒に飲んでいた蘇畑の同僚によって「サイアク」と評される。
蘇畑とお見合いをした男性はフラれる。
真帆の父親は、真帆によって公衆の面前で罵倒される。
妹の夫は不倫している。
彼らは、みな社会的な責任を果たし、おおむね“男らしい”男たちであるが、決していい描かれ方をしていない。
一方、蘇畑に優しい男たちはどうか?
八代はゲイで、一家を支えるべき父親はメンタルを病んで仕事を休んでいる。
彼らはそれぞれ事情を抱えていて、そして“普通の男らしくない”。
この脚本上のメッセージは明らかだ。
決して、世界の全員が“普通”ではない。
そうであるなら、“普通”という価値観の押し付けは、暴力になり得る。
蘇畑だけではない。
八代はゲイであるために小学校の先生を辞めたことが示唆されるし、父親はメンタルを病んでいる設定。このように、“優しい男たち”もまた、“暴力”にさらされ、傷ついている。
そのような中にあっても、ラスト、蘇畑は走り始める。
彼女の好きな映画「宇宙戦争」のトム・クルーズのように、それは何かから逃げるためではないだろう。
蘇畑は強い。
だが、その強さは、いわゆる“男らしさ”のようなものとは違う。
そういう強さを持った女性を、三浦透子が実に巧く演じている。
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