「細かい笑いがツボ」そばかす shironさんの映画レビュー(感想・評価)
細かい笑いがツボ
ものすごくパーソナルなことを俯瞰で捉えた作品。
主人公は一人だけれども、登場人物それぞれの主観が交錯する、群像劇の面白さ。
長回しでフッと空気が変わる瞬間がたまらなく好きなので、しょっぱなの合コンシーンから心を掴まれました。
気まずい空気や感情のすれ違いが、いちいち笑えます。
「人生は間近で見ると悲劇だが俯瞰で見ると喜劇である」とは喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉ですが、登場人物それぞれの思いが手に取るように伝わる演出だからこそ生まれる笑いで、息のあった演技のアンサンブルも見事でした。
とくに坂井真紀さんの絶妙なタイミング!
伊藤万理華ちゃんの自然体に感じる演技も好き。笑わせてもらいました。
そして三浦透子さんの
相手を傷つけてしまって、自分も傷ついて
…これ、何度も経験してきたんだろうな。と思わせる演技に胸を締め付けられました。
主人公は両親の期待に応えられない二つの負い目を感じている。
人として生まれたのに性的な関心の無い自分
音大を出たのにチェロを弾いてない自分
失望させたり悲しませたくないので、諦めてくれる日を待っていたように写ります。
決して特別な人だけが抱える特別な問題ではない。
さまざまな出会いを経て変わっていく主人公から、一歩踏み出す勇気をもらえる映画でした。
長靴のピッピ、赤毛のアン、キャンディ・キャンディ。あと『耳をすませば』の夕子ちゃん。
“そばかす”は多くの少女達が社会通念への疑問を感じるファーストアイコンだと感じます。
生まれつきの事にとやかく言ってくる社会を知り、全く気にしない強さに憧れ、コンプレックスに感じることはないと確信する。
生まれながらの「蘇畑佳純」
そばかすは彼女の魅力のほんの一部。