「降水確率0%の土地に住む『救いようのない人々』の声無き叫び」渇きと偽り BONNAさんの映画レビュー(感想・評価)
降水確率0%の土地に住む『救いようのない人々』の声無き叫び
終了間際に行ってきましたが、滑り込みでも映画館で観ることが出来て良かったです。
オーストラリアの広大な乾燥地帯。
どこまで行っても水のない地域と、孤立する民家。
特に“昔からそこに住む人々”と“新参者”が住む地域は明確に分かれているらしく、後者は思いっきり郊外。
延々と映る真っ直ぐな道は、主人公とその友人達が歩んできた終わりなき絶望の道にも感じられました。
なお、事前に過去と現在が交差してかなりわかりにくい描写と聞いていましたが、確かにそう感じられるところがある一方、犯人を追い詰めた時の描写は現在の描写に過去のあの場面が被ることで、客に(なんでそいつ助けんのさ?!)と思わせる、ある意味主人公のやるせなさが伝わってくる良い演出だったと思います。
オチが◯◯◯◯◯行きだったのは思わず笑ってしまいそうになりましたが。あの人の怨念かな。
正直、主人公が歩けば証拠品に当たると言うか、ちょっと出来過ぎ感のある展開でしたので、映画にするよりは数話のドラマにした方が良い印象はありました。
ただ、映画だからこそオーストラリアの大自然が映えると言うか。そこに住まう人々の物理的な孤独感も捉えやすいと言うか。
主題歌、死ぬほど素晴らしいです。Under The Milky Way。The Church というバンドの曲をエリー役のBebe Bettencourtさんが歌っておられるとのことで。
これ、劇中とラストで流れるんですが、ラストで流れた時に曲の意味合いが全然変わるんですね。
すごく重い。
雨が降らない→作物が育たない→産業が死に絶える→人口減→蝕まれる人々の精神と財布事情。
比較的元気で希望を持っている人々は新参者ばかり。昔からいる人達は荒みきっている。
この町の3年後は一体どうなっているんだろう?
正直、私がアーロンなら2度と戻りたくはない。そこにエリーの影があったとしても、もう希望はどこにもないのだから。