「タイトルなし(ネタバレ)」ロッキーVSドラゴ ROCKY IV りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
『ロッキー』シリーズ第4作『ロッキー4 炎の友情』をスタローンが42分以上の未公開映像で再構築した作品。いわば、「シン・ロッキー4」ですね。
前作で再びチャンピオンの座を取り戻したロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。
米ソの確執が激しくなる中、ソ連から「殺人マシーン」の異名をとるアマチュアチャンピオン、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)がプロ転向、真のチャンピオンの座をかけて戦いたい、と宣言した。
しかし、ドラゴと戦うことはチャンピオンとしての名誉にならない、と協会は拒否。
ロッキーのライバルで、すでに引退して久しい親友アポロ・クリード(カール・ウェザース)がドラゴの相手として名乗りを上げるが、リング上で斃れてしまう・・・
といったところからはじまる物語は、オリジナル版と変わらない。
が、本作ではドラマツルギーの凝縮を目指して、弛緩したエピソードを削り、役者たちの顔のアップを中心にして映像を差し替えています。
これにより、映画の密度は濃くなりました。
ただし、もともとスコープサイズでなかった映像をスコープサイズに引き伸ばしているため、画の天地が狭くなり、やや暑苦しい感じになったのは否めません。
斃れたアポロの弔い合戦といわんばかりに、ロッキーは単身ソ連に乗り込み、ドラゴの科学的トレーニングに対して、雪原の中での原始的トレーニングを行い、決戦へと向かうことに。
このトレーニングシーン、オリジナルでもひとつの見せ場になっていましたが、本作では編集を変えて、ドラゴとロッキーの同じような動作のクロスカッティングで、対比性を上げているように思いました。
このエピソードの直前、ロッキーが引き留めるエイドリアン(タリア・シャイア)を振り切る階段でのやり取り、陰影の深い映像で、なかなかいいですね。
こんないいシーンあったかしらん、と思った次第。
さて、ドラゴとの決戦の場。
尺自体も伸びているようで、ファイティングシーンも迫力を増していますが、感心したのは、第1作『ロッキー』でのアポロとの闘いを彷彿とさせるところです。
オリジナルを観たときは「どうせロッキーが勝つんでしょ」と高を括っていたところもあったのですが、本作では「最終ラウンドまで戦い抜く」といった感じに仕上げていますね。
見るからに圧倒的力差がある相手に対して「戦い抜く」、勝つかどうかは問題じゃない。
オリジナル・ロッキーへのリスペクトを感じます。
試合後のロッキーの談話のシーンは短くなっているようですが、現在に通じるメッセージ(国と国で殺しあうよりは・・・のくだり)は鮮烈になり、「変わること(チェンジする)は出来る」というよりパーソナルなメッセージも心に残ります。
(ロッキーが言う「俺は変わった」は、本来のロッキーを取り戻した、と読み替えてもいいでしょう)
米ソ対立という時代が時代だったので、「強いアメリカ。アメリカ・イズ・ナンバーワン」臭の強かった『ロッキー4 炎の友情』ですが、
本作は、第1作『ロッキー』と最終作『ロッキー ザ・ファイナル』を経て、『クリード』シリーズへと繋がる重要な作品として甦ったと言えるでしょう。
<追記>
映画通としても知られた故・池波正太郎が『映画日誌』の中で、『ロッキー3』公開時に、スタローンのことを「シュトロハイムに匹敵する才能」と評価したのを思い出しました。