「大切な人へ思いを伝える」ロッキーVSドラゴ ROCKY IV talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
大切な人へ思いを伝える
私達は映画「クリード」の1も2も知っている。それ以前、エイドリアン亡き後のロッキーも知っている。その上で、見ても見ていなかったとしても今回のスタローン編集による本作は心に沁みた。
愛する人、大切な人へ言葉を伝えるというのが今作の大きなテーマの一つだと思った。アポロの妻もエイドリアンも眼差しと共に夫への思いを言葉で伝える。アポロのトレーナーはロッキーに言う、アポロは俺が作った、俺の息子だ、今度は俺がお前の父親だ。ロシアに向かう前にロッキーは、自分の生き方を決めるのは誰でもなく自分だと息子に伝え、ポーリーは試合直前、生まれ変わったらお前のようになりたいと今までの感謝と共にロッキーに伝える。ロッキーが一人「サウスポー」と書かれた車に乗って今までのこと、エイドリアンとの初デート、ミッキー、アポロ戦、エイドリアンへのプロポーズ、アポロに鍛えられたカリフォルニアの日々を、アポロが自分に言った言葉を思い出す。モノクロのこのシーンは観客がロッキーと共有できる回想場面だ。
そして映画「クリード Ⅱ」でドラゴが息子と共に現れアポロの息子とリングで闘うことを知っている私達は、ドラゴが当時どれだけの孤独と屈辱を味わったのか知っている。話すのはドラゴの妻とスポークスマンだけ。ドラゴは話すことも許されず耳も傾けてもらえない。ドラゴ、ドラゴと自分の名をつぶやく彼の言葉は無視される。ロッキーとの試合では言われた通りのことだけするよう指示されている。だがファイターとして対等の立場で向かってくるロッキーがドラゴの心を開いた。その瞬間がよく見えた。国家は関係ない、ドラゴという名の一人の男の闘いに変わった。素晴らしかった。そこに重点がおかれたから、ロッキー勝利後のスピーチを聞いて、ゴルバチョフそっくりさん含めた高官達が前作(Ⅳ)では拍手したがその場面カットして拍手なしで去った編集にしたのはいいと思った。
Ⅳを知っていても新しい映画を見るようだった。編集も映画の命だと思った。スタローンは素晴らしい映画人。
おまけ
1)アポロには呼び名が沢山あって一番気に入ったのは「ダンシング・デストロイヤー」!
2)James Brownが歌う場面がいい感じでたっぷりあって良かった。
> アポロは俺が作った、俺の息子だ、今度は俺がお前の父親だ。ロシアに向かう前にロッキーは、自分の生き方を決めるのは誰でもなく自分だと息子に伝え、ポーリーは試合直前、生まれ変わったらお前のようになりたいと
> 私達は、ドラゴが当時どれだけの孤独と屈辱を味わったのか知っている
> 自分の名をつぶやく彼の言葉は無視される。ロッキーとの試合では言われた通りのことだけするよう指示されている。だがファイターとして対等の立場で向かってくるロッキーがドラゴの心を開いた。その瞬間がよく見えた。国家は関係ない、ドラゴという名の一人の男の闘いに変わった
コメントありがとうございました。
いえいえ、talismanさんの上記引用した部分はじめ皆のレビューを読んで、やはり反省しています。読んだ後の俺は、たしかに本作は(最悪の結果をも覚悟してなお闘いたいという)ロッキーの決意、それを感じとった上で送り出す仲間たちの思い、ドラゴの完成度とそれに相反する心中の苦悩といったものが主題なんだなあと思いました。
胸熱でした。ナイスレビュー!
> ロッキー勝利後のスピーチを聞いて、ゴルバチョフそっくりさん含めた高官達が前作(Ⅳ)では拍手したがその場面カットして拍手なしで去った編集にしたのはいい
そうか。前は高官達すら感動してたんでしたね。いやあ、忘れちゃってるなあ