「技術の進歩と、スタローン自身の進歩が生み出した新作」ロッキーVSドラゴ ROCKY IV コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
技術の進歩と、スタローン自身の進歩が生み出した新作
あの「アメリカン筋肉(マッチョ)こそ最高」なプロパガンダ作品だった旧作『ロッキー4 炎の友情』とは、全然別物。
91分→94分だが、そのうち42分が別シーンへの入れ替えで、完全新作じゃないのかという感じ。
傑作ってわけじゃなくて、普通に面白いです。
旧作からドラゴの繰り返しドーピングやロボット的なシーン、さらには試合そのものの尺がかなりカット。
代わりにロッキーたちの「何故戦うのか?」という葛藤や、家族との心の在り方が増えていました。
製作された1985年当時はあの旧作でよかったんです。
薄っぺらい「アメリカvsソ連」国家の代理戦争に、「自然に鍛えた筋肉vsドーピング」のふりかけ程度で。
79年ソ連アフガン侵攻→80年モスクワ五輪ボイコット&イラン・イラク戦争→84年ロス五輪ボイコットと、いわゆる「新冷戦」で米ソが一触即発の緊張状態。
さらにスポーツ選手が割をくって、活躍出来ず引退が続いた時代の空気そのものの映画でしたから。
それでも十分で、熱狂的支持の上でヒットしたはず。
ところが時代を知らないor忘れた人が後から見るとスカタンというか、スカスカというか、よくわからない、愛国心だけを押し付けたような映画にも思えてしまっていました。
説明不足でアポロもロッキーも戦う意味のなさたるや。
そこに、今回入れ替えられた新たなシーンによって、
「俺は今でもロッキーと同じ偉大なチャンピオンなんだ」という意地と。
「ロッキーに負けて一度引退したからって忘れられたくない」という執念と。
「俺たちが積み上げてきたアメリカのボクシングを舐めるな」という誇りと。
「俺より強そうな奴を倒すチャレンジがしたい」というファイターとしての本能と。
これらが合わさって、アポロは戦ったんだな、と感じさせられました。
さらにロッキーが、単なるかたき討ちではなく、アポロの気持ちを継いで「ドラゴに勝たないとチャンピオンを名乗れない」と「あいつに勝ちたい」の思いで戦うように思えました。
だからこそ、本作の編集の方が、続編の『クリード』シリーズに綺麗に繋がると思います。
あと、音も編集されて5.1chになり、音楽はもちろん、効果音も重奏的。
殴る音の痛そうな感じがすごく良く、低音が腹に響いて、自分がロッキーに殴られているような気がしました(苦笑)。
これを体感する意味でも、配信スルーしないで、スクリーンでの鑑賞をおすすめします。
テクニカルな面(技術)の進歩と、スタローン自身の進歩の両方が揃わないと出来なかった作品でしょうね。