「なかなか良かった」エゴイスト お喋りな啄木鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
なかなか良かった
原作未読、封切り前の紹介記事で写真を見たからゲイの物語なのは分かっていたが、タイトルから鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんの過激そうな濡場や修羅場を勝手に想像してアマプラでマイリストに入れたまましばらく放置していた。
ふと見る気になって見始めたら、ゲイの濡場のシーンもあるにはあるが、もともと腐女子のせいか、嫌悪感もなくすんなり見られたし、何よりタイトルから想像する身勝手、自分勝手な人は出てこなくて、何ならピュアラブストーリーだと言ってもいいくらいの映画だった。相手が異性ではなく、同性だというだけの違い。それに今どきの映画らしく、ちゃんとインティマシーコレオグラファーもついて、演じる役者さんへの気遣いもされていることがうかがえた。
では、どこがエゴイストなのかといえば、強いて言えばその恋を続けるために中途半端な援助を申し出て、そのために恋人は無理に無理を重ねることとなってそれが文字通り命取りになったことくらいしか思いつかない。
でも、それはお互いが幸せに2人の時間を過ごすためだったのだから、遺されたほうが気に病むことではないと思うが、この映画はいい人しか出てこなくて、主人公は気に病んでしまい、彼の死後は彼の母親まで親身に面倒を見てしまうのだ。そういう意味では無用なストレスを一切感じさせず、主人公の真摯でストレートな愛情を感じて温かい気持ちにさえなってしまった。主人公が若くして実の母を喪っているということもあるのかもしれないが、綺麗な物語だと思った。
追記 主人公の設定としては全く似ていないが、何となく昔観た『トーチソングトリロジー』が思い出された。