「東京でファッション誌の編集者として働く浩輔(鈴木亮平)。 ブランド...」エゴイスト りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
東京でファッション誌の編集者として働く浩輔(鈴木亮平)。 ブランド...
東京でファッション誌の編集者として働く浩輔(鈴木亮平)。
ブランドファッションを身にまとい、さながらそれは甲冑、戦闘服のようでもある。
そんな浩輔も、同じゲイ仲間の前では優男になる。
ある日、仲間から紹介されたパーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と出逢った浩輔は、ひとめで彼に惚れてしまい、すぐに肉体関係を持つことになる。
龍太が母親のために働いていることを知り、さらに入れあげるのだが、龍太の仕事はウリであった。
浩輔の思いは冷めることはなかったが、浩輔の思いを知った龍太はウリの仕事ができなくなり、浩輔に別れを切り出す・・・
といった物語で、ここまでが前半3分の1。
ここまでで、幾度となく浩輔と龍太の生々しい肉体シーンが登場し、息が詰まってしまう。
さらに、別れた後、ウリの仕事に戻った龍太の生々しいシーンも続き・・・
いやぁ、こんなにこの手のシーンが続く映画、日本映画の一般映画でははじめてではありますまいか。
かつてはそれ系の映画館もあったりしたが、観たことがなかったからねぇ。
と、そんな肉体シーンに息もつけない状態のなか、映画は突然の変転を迎える。
龍太が急死してしまうのだ。
えええ、そんな・・・
で、タイトルにもなっている「エゴイスト」が描かれるのは、この中盤以降。
龍太の代わりに、面倒をみようと浩輔が龍太の母親(阿川佐和子)に申し出、母親も仕方がなく受け入れる。
その浩輔は、ただの自己満足なのか、それとも無償の愛のようなものなのか。
映画の面白さは、この中盤以降に屹立して来、特に、実家との折り合いが悪い浩輔のハナシが加わるにあたって、代償的な愛にもみえるのだけれど、それを受け入れる龍太の母親がいいのである。
エゴも愛も紙一重。
いや、紙の両面、表と裏。
前半の肉体の葛藤が、後半は精神の葛藤へと昇華していく。
日本映画では、いろいろな意味で、近年稀にみる映画だったように感じました。