「見所は主役2人のセックスシーン」エゴイスト simaさんの映画レビュー(感想・評価)
見所は主役2人のセックスシーン
序盤に主役2人のセックスシーンがある。
そのシーンを観て感じた事は、居心地の悪さと微かな違和感。
それは濃厚な性描写を見たから、という理由じゃなくセックス中の2人の「熱」が映像から伝わってこなかったから。
行為自体はかなりしっかりと描写されているのに、そこに相手を心から求める欲情は映されず、美しいんだけどマニュアルを一通りこなしましたって印象だった。特に龍太の方は。
その違和感は作中で浩輔自身も「なんか丁寧すぎるんだよね」と口にしていた気がする。
映画を観ている自分も龍太がどうゆう人間なのか掴めず、途中で浩輔の金を持ち逃げして消えるって展開になるんじゃないかと思ってた。
でも、終盤に突然龍太の死が告げられ、その後龍太がどれほど浩輔を愛していたかが分かる。龍太にとって浩輔がどれだけ大切な存在だったかが。
そこで、序盤のセックスシーンの意味合いが色付けされる。
ウリを生業にしている龍太にとってセックスは「義務」の意味合いが強かったんじゃないか。相手を喜ばせなければならない、満足させなければならない。でも義務感から行うセックスほど虚しい物はない。
龍太は浩輔の事を愛してた。本当に大切に思ってる人とのセックスですら、相手を知る驚きや、繋がれる喜びよりも、こうすれば満足するはずという「仕事」のようなモノになってしまう。
2人のセックスシーンから感じた違和感は、そうゆう龍太の哀しみも監督がそのシーンに折り込み、役者2人がそれを表現したからじゃないかと思う。
いわゆるBLモノの消費されるための性描写ではなく、人物の背景をセリフ以外で伝える映画的なセックスシーンが最近の邦画でどれだけあっただろうと思うと、それを見るだけでも充分鑑賞の価値のある作品だと感じた。
(もし監督に尋ね事ができたら、そんな演出意図は全くないですって言われるかもしれないけど笑)