クレイジークルーズのレビュー・感想・評価
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キャストと豪華客船の風景が見どころ、よくも悪くも軽&ゆる映画
サブスクで暇つぶしに観るのがちょうどいい、お気楽サスペンス&ライトコメディ。
リアリティラインは低め、散々見たような設定、展開もご都合ありのお約束という感じ。安心感のあるキャスティングとMSCベリッシマ号のリッチな雰囲気(実際の船でのロケなし、実寸大セットとVFXではあるが)を楽しむのが吉。
最近深刻なテーマの邦画ばかり観ていた身にはこの軽さもある意味ありがたい。
キャストでツボったのは菊地凛子。彼女、シリアスでもコメディでも極端さのあるキャラを演じるのが上手いなあと改めて思った。
朝ドラ「ブギウギ」の茨田りつ子役では、主人公との関係性における真面目な意味での存在感と、うっすらまぶされた淡谷のり子のモノマネ風味からくるユニークさの絶妙なバランスが素晴らしい。そのユニークな部分が本作で遺憾無く発揮されたという感じ。世間が持つ業界人のイメージの戯画化が上手くて笑ってしまう。
正直、坂元裕二のインパクトを狙い過ぎた台詞回しは普段苦手なのだが、保里川藍那に関しては菊地凛子の振り切った演技がその先入観を中和してくれた。
それにしても、「怪物」でカンヌ脚本賞を受賞した後に、時系列的に偶然とはいえ登場人物が「なに? カンヌって。TOHOシネマズで見ればいいじゃない」「カンヌっていうのは庶民からじゃなくてお金持ちからお金を取る作品っていうことね」と言ってしまう作品を世に出す流れになるとは、坂元裕二もカンがいい(褒めてはいない)というか何というか。
本人はこの偶然について、「内輪ネタのようで恥ずかしいが、自分が鋭くなってきているから」とインタビューで答えている。そーですかー。
個人的には、保里川以外は「坂元裕二ってこうだよな」(苦手意識に基づいて)という壁を越えられない部分が散見されたのだが、坂元ファンにはその辺も見どころなのかもしれない。
吉沢亮とコメディといえば、アイリスオーヤマのCMシリーズで演じる要(かなめ)正直のキレキレっぷりが好きなのだが、本作ではちょっと弾け方が物足りなかったかな。アイリスオーヤマを前提にするのも何だけど。
冲方は彼に当て書きされたらしいが、吉沢亮はもっと出来るのに、と思ってしまった。
宮崎あおいを久しぶりに見たが、若い。変わってない。現在2人の子育て中で、2年ほど作品に出演していなかったらしいが、Netflix作品の制作現場が労働時間管理もしっかりしており、育児中でも働きやすい環境があったことも今回の出演理由のひとつだそうだ。
永山絢斗が普通に出演しているのは、昨今の風潮に照らしてちょっと驚いた。いや、これで全然いいと思う。映画製作は、たった1人の不祥事とは無関係な大勢の人が関わっているのだから。Netflixオリジナル作品の強みという面もあるのだろうが、他の映画でも諸事情調整して、これが当たり前になってほしい。
長谷川初範演じる宗平がさらっと語った過去は、このゆるい話に不似合いなエグさで一瞬引いてしまった。
謎解きとラブストーリーについては、めまいがするほどベタなので語れることはない。
キャストの面子とベリッシマのセットを中心に、気軽にゆる〜く楽しむ心づもりで観ることをおすすめします。
え、ほんとに坂元さん?
まるで船上の舞台喜劇だな。
有○天ホテル?
そんなにクレイジーか?
宮崎あおいのファッションが可愛い
初々しい
いろいろ盛りだくさん
クリスティ風の古典推理小説的舞台と素人がやむにやまれず即席の探偵業をやるプロットを現代的な風物にのせてコミカルに描いている。
坂元裕二を見ていると「日常生活で面白いと思った現象を全部書き留めているのではないか」という細部が幾つもあって感心させられる。
実直な庶民感覚もあり──
「この世でもっとも愚かな人間、それは店員さんに偉そうな人です。」
──は、しびれるセリフだった。まったくそのとおりだ。
伏線を散りばめまくってそれがひとつひとつ回収されていく様は見事というほかなく、鑑みてこうやって仔細に人物や現象を積み重ねる脚本を書く脚本家は他国にも類例が思い当たらない。
器用なだけでなくじんわりとエモーショナルなところもありで、まったくのところ、だてにカンヌ脚本賞を獲ったわけじゃなかった。
俳優では岡部たかしが気になったのと潤浩という子役が光っていた。
潤浩はゆんほというのだそうだ。すでに有名子役なのかもしれない。潤浩くんが演じる家政婦の息子が本作のキーパーソンになっていて、コメディで進行しつつヒューマニズムを魅せる片側もありで、かさねがさね感心させられる脚本だった。
さまざまなエレメントが交通渋滞して拍子抜けするところはあるものの、客船周りの拓けた眺望がつくる撮影も明媚で、なにより日本映画の嫌味がなくネットフリックスの一夜を過不足なく満たすさわやかなコメディだった。
──
メディアの持ち上げ度によって名実が成り立つのが日本。
たとえば三谷幸喜はよく持ち上げられる。だけど三谷幸喜ってそんなに面白い?面白くないとは言わないが、個人的にそれほどじゃない。
それに比べて板元裕二は面白いわりにメディアの持ち上げ度はほとんどない。
三谷幸喜はたまさか引き合いにしただけで罪はなく、言いたいのはマスコミがさかんに持ち上げているクリエイターやアーチストがほんとにいいのかという話。有名無実なやつが君臨している現象って結構あるよねという話。
だから、じぶんの内なる評価がメディアの持ち上げ度によって形成されたものなのか、じぶんが自力で発掘したものなのか、いちど検証してみるのがいい。
──
余談だが、かれらが活躍していることに文句はない。
しかしなぜ日本映画にはかならず安田顕と岡山天音が出てくるのか。
なぜ日本の映画(やテレビ)の助演俳優は集中稼働になるのか。
日本にはテレビや映画に出たがっている役者がいないのか。
韓国にも「この人よく見るなあ」と思わせる中堅助演俳優がいる。
だけど韓国はそういう中堅助演俳優が山ほどいる。
が、日本には安田顕しかいない。
なぜ新しい俳優にやらせないのか。
見知った顔しか認めないのは多様性の問題でもある。個人的には見たことのない俳優が映画やテレビに出てほしい。日本の人口が高齢者でどん詰まりになっている現象と、有名俳優だけで構成され刷新交替がなくどん詰まりになっていく業界の現象がかぶっていると思った。
30点
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