消えない虹のレビュー・感想・評価
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個々どうしても気になる点はあるが高評価(採点内容でネタバレ含みうるので注意)
今年330本目(合計605本目/今月(2022年11月度)17本目)。
まず、本作品自体、かなり少ないごく少数のミニシアターでしか扱っておらず、監督の方のトークショーにおいても、「多くの方に光のあたらない映画業界において、ミニシアターで放映されるような映画から「推し」の人や監督の方などを見つけていただけると、次世代の後継につながるので幸い」という趣旨のことを話されていました。
この点についてはまさにそうだと思います(ミニシアターの一つの役目、だとも思います)。
内容はここに書いてあること、それ自体は3割ほど序盤に語られますが、残りの7割はここの予告編の「実は隠されていた過去」の部分、そこにあたります。しかしどちらも究極論を言えば「人を赦す(ゆるす)ということ」、あるいは、映画内でも直接言及があるように、「少年法で裁かれることがない触法少年はいかに扱うべきか」という点に論点があります。
この部分は結構わかりやすい論点で映画内でも描かれているし、ここの予告だけが「すべてではない」(実はそれぞれの登場人物の「隠された過去」にまであたると、二重三重のお話の「層」が存在します)点まで含めると、結構よく作られているな、というところです。
採点に関しては、ここでは5.0を超えることができないため、下記のようにしています。
まぁ、行政書士の資格持ち、レベルで思ったところです。
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(加点3.0/初監督の方の初挑戦(扱った内容)について)
・ 助監督などは何度か経験されているとのことですが、監督としてのレビューが本作品になるとのことです。そのため、映画の「お作法」についてはほぼ引く(減点する)ところがなく、また、初監督ということで何かと「視聴者が来やすい」テーマを選びそうなところ、このような重く、かつ、個々人に考えてね、ということを扱ったという点は高く評価できます(この点は、2021年にトップ評価した「プリテンダーズ」も同趣旨です)。
(減点0.7/一部の発言の趣旨が怪しい)
・ 触法少年(少女も含み、法上は「触法少年」という。以下、少年少女の違いはすべて度外視)を扱った内容で、確かに刑法上刑事裁判の対象にはなりません。
ただ、そのことと、映画内でちらっと出てくる弁護士の方の「13歳以下なので刑事責任が問われることはありません」というのは、確かにその発言「それだけ」を切り取ってみれば正しいものの、実際は「広義にとらえると」ちょっとここは厳しいです。
つまり、触法少年(通常、10~13歳が対象にされることが大半)の中でも、その程度が重いもの(この映画で扱われている「事件」も含め、一般的に非難の度合いが高いもの)については、原則的に児童相談所や家庭裁判所が絡んでくるのです(法上は、原則がそうで、他に酌むべき場合はそうしないこともできる、という扱い)。こうなると、「実質的に」刑事事件と「そうかわらない」からです。
また、当然のごとく、民法上の不法行為としての損害賠償論も発生します。もちろん、13歳の子を被告にするのではなく、「その親の監督責任」を問いますが(民法上の不法行為の特則)、この場合、「被告となった加害者の親が、適切な監督をしていた」ことを立証しない限りアウトです(通常は、「訴える側」に立証責任がありますが、このケースでは「責任がないことの証明責任」が加害者側に移ります(「中間責任」(論)または、「立証責任の転換」論)。
こうなると完全に被告勝訴(=換言すれば、原告側=いじめられた側=敗訴)ということは難しく、実際には金額面では調整はされますが(いじめられた側にも何らか責任がある、など、全体を見て裁判所が考慮します)、到底どうやっても払いきれない損害賠償額になるのです(民法上の不法行為では、金銭賠償が原則です)。
またさらに、映画内では明確に描写がありませんが、公立高校であれば教師の生徒に対する監督不足を問うて国家賠償法、私立であれば民法に基づく民事訴訟法(結局はどちらも民事訴訟になりますが(国家賠償法は民事訴訟の特殊類型)、管轄する法律が微妙に違う)も遺族からは飛んできます。これも学校側は勝ち切ることは容易ではない案件です。
つまり、こうした「広義の意味での責任論」は触法少年(10~13歳)では存在しますので、「刑事責任が問われることがない」それ自体の発言は正しいものの、だからといって「何もかもすべて問われず明日から登校していいんですね」ということにも当然ならず、この点は「明確に説明不足」な案件です。
※ もっとも、「「事件性のある」事案の法律相談」は弁護士にしかできません(弁護士法)が、「これしか」言わないのも不親切極まりないところです。司法書士や行政書士については、「事件性のないもの」についての「一般論としての」法律相談に答えることは、実質上黙認されているところです(←これは、実際問題、多くの国民が誰が弁護士で誰が司法書士で、さらに弁護士法だの行政書士法だのという細かい縛りを知らないのに相談されることが実際問題多く、極端に「職務の範囲外」は論外として、「扱えませんので他に行ってください」では、国民はたらいまわしにされるという実際上の問題がある)。その場合、「これってどうするんでしょう?」と仮に行政書士に相談された場合、「詳しくは弁護士さんだけど、国家賠償法(または私学の場合、民事訴訟法)で学校の責任も追及できますよ」と答えられないのも変です(何のための試験かわからない)。
カレーライスは家族の絆
島田監督が石川県出身であり、原田眞人、成島出、篠原哲雄、深川栄洋らの作品で助監督を務めていたという経歴からして期待値マックス。しかも内容は14歳未満の者が犯罪を犯しても罪に問われないという触法少年を扱ったもの。切り口もいいし、解決に向かう展開も清々しいし、重くなる一方ではないところが良かった。
ただし、低予算製作が目に見えるほど美術には金をかけてないし、音楽もひどかった。主人公の月野木の新居だけが綺麗だったけど、他は生活臭がムンムン。これがラストで見られる虹と対照的であり、タイトルの意味もわからずに納得してしまった。さすがにB'zの同名タイトル曲はかけられないわなぁ。
被害者遺族の犯人に対する恨みは到底消えるものではない。それこそ罪を償ってないのだから死ぬまで憎い(民事上の賠償金はあると思われる)。26年間罪の意識に苛まれ、家庭も誹謗中傷の嵐に耐えられず、両親がついい自殺してしまったと告白され、恨むのを止めたクライマックスのシーンがいい。最も罪深いのは誰なんだ?といった側面も考えさせられる。似たような作品はありましたが、それが被害者遺族も同じ経験をするというトリッキーな展開で真の和解へと期待させるのです。
最も心が広かったのは月野木の婚約者だった千明なんだろうな~結婚式を延期されてもずっと待っていた姿にほっこりさせてくれた。新聞社の様子や触法についてもかなり調べてあると思われたし、礼儀知らずの報道陣といった生々しさ(グロさはない)もイジメがあった事実についても考えさせられた。鑑賞後にカツカレーを食べたのはサブリミナル効果だったのかもしれません・・・
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