「4DXで観たら失神する人が続出しそうな一作」ビースト yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
4DXで観たら失神する人が続出しそうな一作
予告編から想像できるとおり、サバンナで孤立した親子が獰猛なライオンに襲われる恐怖を描くという、アトラクション・ムービーに全振りした映画でした。アフリカの大自然の美しさと、夜の帳に覆われたサバンナの底知れぬ深さの対比が素晴らしく、ライオンの凶暴さ以前にその風景、映像の美しさに驚かされます。撮影機材の充実ぶりはもちろんのこと、撮影時の光線状態の計算が非常に入念だったことをうかがわせます。
全編を貫く異様な緊張感は、カメラから飛び出してきそうな程に迫ってくるライオンとつんざくようなうなり声だけでなく、非常に長い長いワンショットによっても高められています。思わず飛び上がりそうな描写が続くあまり、早く画面が切り替わって、この緊張感を解いて欲しい…、という観客の願いを見透かしたように、自在に動き回りながらもなかなか途切れない映像がもたらす効果は絶大です。
一体どうやって撮影したんだよ、と思うほどに恐ろしくも堂々とした体躯の「ディアボロ」とも呼ばれる凶暴なライオンの撮影方法については、監督インタビューや解説などを参照してもらうとして、その描写の迫真性はちょっと近年の作品では比較できないほど。
アトラクション的な側面にほぼ全上映時間が費やされているため、確かに主人公とその娘達の関係などのドラマ部分の描写は少なめですが、それがドラマの描き方の浅さに直結している、という訳ではなく、少ない台詞や演出で巧みかつ無駄なくその関係性を描いてみせています。アクションの中にドラマを入れ込む、という演出手法自体はそれほど珍しいものではないのですが、本作はその中でもかなり成功しているのでは。
これは確実に劇場で観るべき作品。