「作品への愛が感じられない悲しい続編。」Dr.コトー診療所 ももさんの映画レビュー(感想・評価)
作品への愛が感じられない悲しい続編。
今まで考察や感想は見る専門でしたが、どうしてもこの気持ちを昇華したくコメントします。
ドラマ第1期が大好きで、特にアキおじの回が何度見ても涙が溢れる大好きなお話でした。映画もとっても楽しみにして、ずっと待っておりました。
見終わって今一言だと、「なぜこんな形になってしまったのか」という悲しい気持ちでいっぱいです。
物語の軸としてはドラマ時代からの離島医療の脆弱さや問題点が一番太い柱となっています。が、一番気になったのは、コトー先生がもう『医者』では無くなってしまったのではないかと感じてしまう描写。
島民と家族になりすぎたからなのか、先端医療からはかけ離れた生活を送ったからなのか、トリアージもできない、どんな人もどんな病気も怪我も自分が救えるかのようなセリフ……。
記者のタツミさんの時はきちんとトリアージしていたのに……もちろんあの時も全員助けていましたが。
医療従事者ではないので見当違いだったら申し訳ないのですが、コトー 先生の医者としての思いとか葛藤とか、そんなのはどこかに消えてしまったように見えました。
また、緊急時に避難所が嫌だから帰宅して怪我するとか、島民の我先に診てほしいという身勝手な要求ばかりが心に残り、答えのない問いや解決できない問題が目の前にあるけどもただ生きていくしかない……というドラマ時代のじーんと考えさせられる余韻というものは皆無でした。
そして気力で回復するかのような、島民の掛け声……。
ホラーです。
倒れたコトー先生を助けることもなく、ただ叫ぶ。そんなに自己中心的な人たちだっけ……と悲しい気持ち。
特に和田さん。コトー先生を散々近くで見てきた人なのに助けず見下ろしてるだけ。怖すぎる。
ここまでホラーだと、あやかさんとの結婚もコトー先生が島から出られないようにした策略なのでは??と穿ってしまいました。(これは極論ですが…、ムラ社会と考えるとあながち間違いではないのかも)
そしてタケヒロ。
なぜそんなに辛い役どころで脚本にいじめられるのでしょうか……。
ドラマ時代にあんなに苦労して辛い思いをしながら夢に向かって努力していた優しいタケヒロが挫折して警察に追われる身になるなんて、そんなの誰も期待してない……。
苦労や葛藤しながらも幸せに、夢に向かっているタケヒロが見たかった。
島の日常と美しい景色、前半はすごくよかったです。
感動の個人的ピークはあやかさんのお母さんの、生きてって言葉だと感じました。生きることの辛さやもどかしさは、身体が自由に動かず一人では生きていけないまさよさんがきっと一番感じているから。生きてって言葉に重みがある。
なのになぜ??治療しようとしないのか??
まあこのシーンからすぐ台風が来た、とかなのかな……。それにしても。。
そしてラスト。
いろんな解釈がありますが、どうしてもコトー先生の夢というか、死に際に見る理想の未来にしか見えない点があります。
ハント先生が、あんな島民とコトー先生の様子を見て、島に残って医療を続けるとはどうしても思えないところがひっかかります。
泣きながら島の医療の現状がおかしいと嘆いた彼が、あんな笑顔で島の医者になるとは思えず……。
でも登場人物全員に幸せになってほしいから現実でもあってほしい(涙)
観客に委ねるラストはモヤモヤが残ってあまり好きではないのでそれも残念でした。
命とは医者とは、という物語の根幹が吹っ飛ばされて、なんだかドタバタ事件が起こって、心身を酷使したひとりの医者が全ての重荷を背負って潰れてしまった。そんな映画に感じてしまいました。
モヤモヤが止まりません。
こういう映画もあります、ありますがコトー先生でそれが観たいわけじゃない。
できることなら、みんなが人生に思い悩みながらも小さな幸せを噛み締めて生きている、そんな物語が観たかったです。
演者さんの細やかな表現や表情はとてもすばらしかったです。そこがまた更に悲しい。。
期待を裏切るなら、いい方に裏切って欲しかったなあ。
追記
問題提起についてはもちろんいいんです。というかそれが物語の軸だと思っております。
ただ、提起しっぱなしで何の解決もせず根性論で丸め込んだところがモヤモヤの根源な気がします。
島民は何も学ばず行動せず変えずコトー先生に背負ってもらってちゃんちゃん、で終わってしまう。
敢えての皮肉なのかな?とも考えましたが、もしそうならあまりにも今までのキャラクターを馬鹿にしていて、まったく愛がないなあと感じました。
色々書いてしまいましたが、ドラマを愛しているファンにとっては難しい作品です。
surf2023さま
コメントありがとうございます!同じお気持ち、大変嬉しいです。能面になりますよね。。
気持ちが処理できず、違う意味でエンドロールで立ち上がれませんでした……。