「立読み防止テープ」グッドバイ、バッドマガジンズ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
立読み防止テープ
監督は、OP PICTURES+フェスでも活躍してるので、キャストや舞台(中華料理屋とウェイトレス)のコラボがニヤリとさせる演出である 本人もAV監督役で出演しているので、手弁当感は好感が持てる
なかなか身につまされる作品内容である 斜陽産業は今現在どんどんこの日本から消滅しつつあり、例え自社が無くなったとしても同産業には就けることが限りなく低い 以前ならば若い人は人生経験と称してその中からやりがいを見いだせる職種を見つける可能性があったが、昨今ではそれさえも危うく、結局何も手に職を得ぬまま人生を浪費してしまう状況が大勢である
さて、そんな今作の舞台である”成人雑誌“出版社だが、時間軸上は怒涛の如く崩れ落ちていく様をリアルに再現していると思えてならない 何かが無くなる時は、その最後は砂時計の如く加速がつくのであろう その時間の流れの速さに観ているこちらも渦に呑まれて感覚に陥るのである 色々な事件が矢継ぎ早に起こるのは物語の都合なのだろうが、今まで溜っていた膿が噴火するように関係者に襲い掛かるスリリングさは、現実に起こっていると実感し共感できるからかも知れないからだ
個人の力ではどうしようもない“パワー”や時勢に巻き込まれたとき、人間はふとその生きていく本質を知りたいと頭によぎる その答えなど決して得られるものではない筈とは分かっていても”現実逃避“としての哲学だ 『人は何故セックスをするのか・・・』それがリビドーであり、動物としての“繁殖力のある子孫を残す”種の概念に則り行動する事だと言えば、学術的にはそうである であれば容姿や性格、生活力といった選択材料の中でお互いを吟味し、その後も続く子孫繁栄に願いを込める事のみに始終すれば簡単である しかし現実は、情念や快楽という部分が狂わせてしまうことが往々である ましてや上記に掛るように、作中のセリフでも
登場する”インパール作戦“さながらの職場環境に於いては生存競争最中に種を残したいという思いが強く念じられるのだろうか・・・
プロットがそんな人間社会の新陳代謝を描く中でのそれぞれの悪戦苦闘を描いた構成で、スピード感ある仕上がりであり、ミスリードを誘う編集や、ラスト前の奥さん登場のホラー等、エンタメ感も散りばめられていて飽きさせない造りは大変良く出来ていた
“愛の求道者”の如く、主人公の追いかける”答え“は、果たして人生の駆動力に成り続けるだろうか・・・ そんな、人生を過ごす目的の発見、ヒントを得られる作品であった ちなみに”捨てる神(紙)あれば拾う神(紙)”的なしぶとく生きるニッチな知恵も織り込むさりげなさもニクい脚色である それにしても上海出張帰りの役員の男のパワハラ振りは、どの産業でも現実にいるのだろうと或る意味ホラー要素でもある・・・(涙