劇場公開日 2022年9月23日

「インド版『ドラゴン桜』かと思ったら『刑事マルティン・ベック』ミーツ『要塞警察』みたいなアクションスリラーでした」スーパー30 アーナンド先生の教室 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0インド版『ドラゴン桜』かと思ったら『刑事マルティン・ベック』ミーツ『要塞警察』みたいなアクションスリラーでした

2022年9月26日
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鑑賞方法:映画館

幼い頃から数学に魅了された郵便配達人の息子アーナンドは遠く離れた大学の図書館に潜り込んでは勉学に勤しんでケンブリッジ大学の入学資格を得たにも関わらず、渡航資金が調達出来ずに進学を断念し、ひたすら物売りに身をやつしていた。そんな折予備校を経営するラッランに見出されて講師となったアーナンドは裕福な家庭の子息を次々に有名大学に合格させてあっという間に人気講師になる。すっかりいい気になっていたアーナンドだったが、ある若者と出会ったことをきっかけにしてかつての自分のように貧しさゆえに自分の夢を諦める子供たちが大勢いることを知り、彼らを全面的に支援しようと講師を辞めて全財産を投げ打って進学塾を設立、 30名の子供達を選抜し彼らに食事と宿と勉学を無料で授け、最高学府であるインド工科大学合格を目指す。

こういうプロットなので、当然インド版『ドラゴン桜』じゃないのかと期待してしまうのが自然ですが、こちらの常識や基本動作とは全く文法が異なるインド映画。絶望的な格差社会への強烈な風刺をコッテリ練り込んだ歌と踊りでこれでもかとドラマをデコります。とにかく延々と繰り返されるのは“王になるのは王の子”という絶望的な現実。理不尽に理不尽が積み重なった末に訪れるクライマックスは子供達が知恵で戦う『刑事マルティン・ベック』ミーツ『要塞警察』みたいなアクションスリラーになるのでビックリ。インド映画なので当然ながら154分という長尺ですが冒頭からずっと見せ場しかないのであっという間に終幕、絶望的な世襲社会に生きる我々にとっても爽快感しかないファンタジーに昇華します。

笑いも涙も全部載せなのに、これが実話ベースの物語だということにも驚きますが、終幕の最後を飾る一言に椅子から転げ落ちます・・・インドってやっぱり恐ろしい国だと戦慄します。

よね