「時代背景が現在だが作りと型は古い」a20153の青春 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
時代背景が現在だが作りと型は古い
構成は決して悪くはない。
主人公の心情、彼を支える彼女の存在もどこかに救いは残る。
ネグレクトと虐待という最悪の家庭環境、そして起こるべくして起きた事件。
おまけに学校ではいじめ。
同じいじめ対象の彼女。
二人が心を寄せるようになるのはわかる。
東京でバイト登録ナンバーがこの作品のタイトル。
コロナ渦でバイトはうまくいかない。家賃滞納、締め出し…
バイト仲間のつまらない計画に乗って、殺傷事件を起こす。
主人公の生い立ち、コロナ渦という逆風、不運…
誰もが経験したくないことが詰め込まれていて、早送りで見てしまう。
出所し誰かの墓参り、彼女への返信もせず、相変わらずバイトしていたのだろう。
この坊主刈りの主人公の冒頭に描かれ、彼の今までの人生が描かれ、そうして彼はある日突然彼女のもとを訪れた。
これがこの作品の時系列になるのだろう。
昔住んでいた家、海辺のボートで野宿。
海辺で燃やす手紙と、大切な時計を海へ放り投げた。
人気のない電車…
「一杯の掛けそば」的な作品だった。
コロナ渦のころに大勢いた失業者の中から少年時代に虐待された最悪の人生を抽出したような作品。
主人公がずっと心のよりどころにしてきた彼女からの手紙と腕時計を捨てることが、彼には彼女を自由にしたいという意味が込められていると思うが、小学校教諭の彼女に生徒が、「結婚すればいい」「…するわ」と答えるあたりがこの作品をわからないものにする。
このような作品は、戦後の日本社会で起きた「一杯の掛けそば」とともに、もう完全にふたを閉じていいと私は思う。
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