「宮廷ドロドロ政争ドラマに疲れたらこれを観よう!的一作」金の国 水の国 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
宮廷ドロドロ政争ドラマに疲れたらこれを観よう!的一作
岩本ナオの原作を未読のまま鑑賞した観客による感想です。
おおよそ予告編で予想できた展開ではあったのですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』をはじめ最新作『ノースマン』に至るまでの、「宮廷ドロドロ政争物」によって、いつしか「この世に善人は一人もいない!」というダークサイドに侵食されかけていた心を、この物語は優しく包摂してくれるのでした。
ひょんな縁で結ばれた敵国同士の二人が、やがて大きな国家間対立に巻き込まれていく物語、です。一言で表現するならば。しかしながら、頑迷固陋な王、高慢な義姉妹、様々な野望を抱いて王に侍る臣下達、潜伏する暗殺者、そして庶民同士ですら憎み合う国家間対立、などなど、ロバート・エガースであれば嬉々として地獄絵図を現出させる要素をちりばめつつ、暴力ではなく信じる心で世界を動かしていく物語を紡ぐ、という一貫した姿勢で物語を描ききったことに感嘆しました(甘い物語はいいからハードな展開を見せてくれ、という方は、やはり真っ先に『ノースマン』を観るべきでしょう)。
マッドハウスの手がけるアニメーションは、表情、風景、そして光の描写まで美しく、これが作品を貫く優しいトーンをさらに強化しています(男の人たちの肌つやが良すぎる問題もあるけど)。
あえていうなら、様々な展開をこの時間に収めた編集の手際は見事だったんだけど、やはり初見で物語を理解しきるにはかなりの集中力を要したので、むしろもうちょっと上映時間を延ばしてゆったりと描いて欲しかったなぁ、と。
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