「献身の愛、ここに極まれり!」金の国 水の国 やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
献身の愛、ここに極まれり!
まず最初に御礼申し上げます。
岩本ナオ先生の短編傑作である本作を映画化していただいた言わずと知れた精鋭部隊であるマッドハウスの製作陣、特に初陣にも関わらずセンス抜群に陣頭指揮していただいたであろう、渡邉こと乃監督に対して深い感謝の意を捧げます。
原作と私との運命的な出会いは映画の宣伝文句にもなった「このマンガがすごい!2017」オンナ編第1位を獲得・・・というのがきっかけでした。当時既に四捨五入したらアラフィフのオヤジが書店で受賞後平積みになっていた同書を興味本位で手にしたしました。しかしながら完全なる少女漫画デザインの装丁でしたので、羞恥心全開で震える手を押さえながら会計のお姉さんに差し出したのをつい先日のことの様に思い出します(笑)。
作品を一読し、その描かれる理想の崇高さ、愛情の深さ、ストーリーの緻密さに驚きを禁じ得ませんでした。
少女漫画の皮を被った化け物級の傑作です。
この様な完成度の高い原作の映画化は、総じて足し引きが非常に難しいと素人でも予測してしまいます。映画化の情報をいただいたとき、正直なところ不安の方が上回る状況でした。
しかし、全くの杞憂でした。本当に素晴らしい映画になったと断言できます。
すでにこの作品の原作ファンの方々にはストーリー詳細についてネタバレ上等で強くお勧めしたいのは山々ですが原作未読の方も沢山いらっしゃるでしょう。ですからネタバレにならぬよう細心の注意を払いつつ、一番印象に残った部分だけ触れたいと思います。
期せずして過酷な状況に追い込まれた主人公二人が運命的に出会うのですが、相手の立場を想像し思い遣り、理想に反する部分に葛藤し・・・結果としてプライドが傷つけられたり自分の身が危うくなることも省みず行動する様・・・献身の精神が実に清々しく美しかったです。
特に王女サーラが「ある人物」に対して切る啖呵がカッコいい!感動して身震いいたしました!原作でも白眉であるこの名シーンの映像化に際し無駄な説明、過剰な演出を加えなかった監督さんは作品に対する理解度が本当に高いと感心いたしました。
二人の互いの相手を想う気持ちと献身が、いつしか深い真実の愛に変わり周囲に波及し、国家の将来さえ変えていくスケールの壮大さは映画化、美麗に映像化されたことで更に強調され、感動の度合いが深まりましたね。
伏線も繊細に張り巡らされていることにも注目です。その回収も見事!すべてが予定されて組み上げられた全貌は、寄木細工の美しさがありますね。作中でも理想の国家のメタファーで登場いたします。
まだまだ作品に対する愛は溢れるばかりですが、前置きも無駄に長すぎたのでこのあたりで打ち止めにしたく思います。
皆様、ぜひご鑑賞を。期待を裏切りません!
グレシャムの法則様、コメントいただきありがとうございます。「この世界の片隅に」も大好きな作品で、原作本を買い、別バージョンも観に行きました。本作もおっしゃる通りになると良いですね。