「尾張国、大うつけと呼ばれる織田の息子・信長(木村拓哉)。 政略結婚...」レジェンド&バタフライ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
尾張国、大うつけと呼ばれる織田の息子・信長(木村拓哉)。 政略結婚...
尾張国、大うつけと呼ばれる織田の息子・信長(木村拓哉)。
政略結婚で、美濃・斎藤道三の娘・濃姫(綾瀬はるか)との婚姻が成立。
過去2回の結婚で、結婚相手の寝首を搔いたと噂される濃姫は、結婚の儀の初夜早々に信長と敵味方に分かれての組んず解れつ。
その夜から濃姫は信長を通じて父・道三の野望を遂げようとする・・・
といったところからはじまる物語で、当初の信長はボンクラとして描かれており、策士は濃姫として描かれるあたり、新手のピカレスクロマンとしての面白さがあります。
さらに捻った一手として、信長の合戦シーンを描かず進めるあたりは、脚本家・古沢良太の策士ぶりが伺えて快調。
(合戦は延暦寺との攻防というあたりがおもしろい)
役者陣では、綾瀬はるかがすこぶる良く、木村拓哉はキムタクの域を出ない。
この「域を出ない」のが意外と面白さのカギを握っているように思えて重要なのだけれど、後半、信長が稚気を超えて魔王ぶりを振うにあたって、濃姫は嫌気がさし、離縁する段に至ってからは、映画的魅力は減速。
本能寺の段に至って、勢いを取り戻し、最後の最後に追い込まれた信長が「あっ」と言わせる手に出るのだけれど、史実を曲げるわけにはいかず(さりとて、著名な「人間五十年・・・」も出さないわけにはいかない)というジレンマで、なんだか高揚したカタルシスが削がれる感じで終わってしまいます。
個人的には、終盤の「あのエピソード」で画面は終わって、その後、「・・・しかしながら、信長は本能寺で自害したというのが通説である」と字幕で出せばよかったのではありますまいか。
東映時代劇中興の祖『柳生一族の陰謀』では「夢じゃ夢じゃ、夢でござる」と、歴史書にないようななことを描いて、観客の快哉を得たのであるから、本作もそれぐらいの法螺を吹いてもよかったと思うのだけれど。
(ま、そうすると中高年層からはそっぽを向かれそうだし、早々にSNSで駄作の烙印を押されそうだけれどね)