劇場公開日 2023年3月31日

  • 予告編を見る

「SFというより“少し・不思議”系」消せない記憶 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5SFというより“少し・不思議”系

2023年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

公式サイトでも当サイトなどの説明文でも、「SFラブストーリー」と紹介されているのだが、サイエンスフィクションの要素を期待して鑑賞すると「えっ??」となるかもしれない。原作となったシナリオが「記憶代理人」というタイトルなので、「JM」でキアヌ・リーブスが演じた記憶の運び屋のようにハイテクを駆使した記憶の転送や埋め込みの描写があるのかと予想したが、ちょっと、というより、かなり違った。

記憶を巡るSFラブストーリーと言えば、傑作「エターナル・サンシャイン」(ミシェル・ゴンドリー、チャーリー・カウフマンらの共同脚本がアカデミー賞受賞)がまず思い浮かぶ。あちらは過去の恋の痛みから逃れるために、脳内の情報に干渉する手術で記憶を消そうとする話だった。一方の本作は、若年性認知症で記憶が消えていく未来を悲観し、恋を諦めようとする話。こう並べてみると、本作は「エターナル~」への返歌のようにも思えてくる。

神崎優衣役は当初、オーディションで見上愛が選ばれていたが、コロナ禍によるスケジュール変更により降板、桃果が代役となった。桃果の演技と雰囲気も悪くないのだが、ギター演奏(特に右手のコードストローク)がところどころ音に合っていないのが惜しい(急な代役で準備期間が短かったのかもしれない)。見上はバンドでギターを弾いた経験があり、「異動辞令は音楽隊!」のスタジオシーンでも実際に演奏した音が使われたそうで、見上による弾き語りの演技が幻になったこともやはり惜しい。

高森 郁哉