劇場公開日 2022年10月21日

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「作品と夢と」夜を越える旅 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5作品と夢と

2024年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

この作品も見る人によって内容や物語そのものが違って感じる。
難しいと感じるのは、実際に起きていることが何かという問題だろう。
最後に主人公ハルトシが目覚め、再び椅子に座って作品を作り始める部分でエンドロールを迎えるので、この物語すべてが彼の夢だったと考えることができる。
冒頭ハルトシは以前書いた作品をコピーしている。その様子を彼女が見ているが、その部屋の様子は最後の部屋とは違うのもその理由だ。加えてその人物の顔は登場しないことから、作品の夢を見ていた漫画家だったのかもしれない。
作品は何度も修正されて出来上がるが、その過程でハルトシはその物語そのものを何十回も考えることで自分のイメージすべてを「ひとつながりの夢」として見てしまったのだろう。
つまりこの夢そのものが彼の描いた作品だったということだ。
そして夢だけに、辻褄などが合わない部分がある。
その辻褄の合わない部分が、修正を繰り返した部分なのかもしれないし、実際にはそうならないことをわかっていながらしているということかもしれない。
最後に彼は遺書を書き残しながら、それでいて車の中で死ぬ主人公の漫画を描いている。
まずこの部分がそれにあたる。
警察がやってきたのはバグなのかもしれない。また、ケントとじゃんけんしたあとケントがいなくなるが、そもそも彼の車であるという矛盾もある。
そして何より、作中で出てくるハルトシの漫画のジャンルが「不条理ファンタジー」ということだ。
作品と夢 この辻褄が合わないところが夢だろう。そして夢の中の不条理は目が覚める直前に起こりやすい。目の覚める最初の出来事が除霊中にケントが噴き出したことと、「ドッキリ?」と口走ってしまったことだ。ドッキリのはずがなぜか急に車の中にいて、しかも呪いは終わっていないこと。
そうしてどんどん不条理が増え、やがて目が覚めてしまう。
最後の部屋の中には、サヤの顔の絵がクリップされていた。漫画家はサヤという人物像を非常に細かく作っていたのだろう。あまりにもその人物像に傾倒しすぎた故に見てしまった「夢」だったのだろう。
作家とはそのようになるまで根を詰めているということを作者は言いたかったのかもしれない。

R41