「かくも儚く、美しくて豊かな物語」紅花の守人 いのちを染める 粉雪さんの映画レビュー(感想・評価)
かくも儚く、美しくて豊かな物語
ある染色屋の店主が言います。
「紅花は、家事も出来ない、性格も悪い、長所がひとつも見当たらないのに、ただ一点その容姿がひたすらに美しい女性のようだ」
一度その価値を知ってしまったら手に取るのも躊躇う高級織物、『紅花の守人~いのちを染める』はそんな映画でした。
紅花の妖しき赤で染められた糸がシルクロードを辿り、行き着いた先で豊かに花開く。戦争で一度切れそうになるも、そこから糸を手繰り寄せ今に繋がっていくエピソードも奇跡のようです。
パンフレットの内容がまた素晴らしかったです。
タイトルは監督の言葉「生産性、効率性が求められる現代の時間の流れのなかに、かくも儚く、美しくて豊かな物語が存在していることを喜びたいと思います。」を引用しました。
この映画の発起人である紅花農家・長瀬さんが寄せた文章も、本当に美しくて何度も読み返しました。
長く語り継がれ、世界にも発信力のある文化遺産的な映画がまた1つ誕生しました。
紅花や草木染め、東北の貿易の歴史に興味のある方だけでなく、スタジオジブリ『おもひでぽろぽろ』の独特な哀愁がお好きな方にもお勧めです。
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