「長文考察ですいません💦」カラオケ行こ! にゃあにゃあさんさんの映画レビュー(感想・評価)
長文考察ですいません💦
こんなにハマった映画は初めて。配信エンドレスで見てます。ぼっち推し活です。誰かと語りあいたいストレスで、つい長文になってしまいました。
表テーマは変声期を迎えた合唱部部長・聡美の悩みだけど、裏テーマは義父を愛そうとする聡美の再生物語。
合唱部の絶対エースの聡美は部長として自信を持って大会3連覇を目指していたが、予想外の銅賞で全国を逃してしまう。
桃ちゃん先生は「愛がほんの少し足りなかった。歌は愛」と合唱指導歴ゼロながら笑顔で力説。「お花畑」と笑う部員の中、心当たりがある聡美は一人俯くのだった。
聡美は2年前に出来た心優しい義父をどうしても愛せないでいたからだ。
「もっさりとしたおっさんのどこが好きなん。僕の死んだお父さん恰好良かったやん」(心の声、推測)
ヤクザには「カスです」と言えるのに、家庭崩壊が怖くて普段義父に猫撫で声を出し、常に神経を使っている日々。義父がくれた趣味の悪い傘もイヤとは言えない。いつも明るい気丈な母に、本当は義父を嫌っていることを絶対バレたくない。合唱祭が終わっても「毎日練習がある」と嘘を付き、義父のいる家に帰りたがらない。
小さな嘘を重ねる罪悪感と日常が破綻するかもしれない緊張感。いつしか聡美の顔から笑顔が消えていった。
この行き詰まった状況を打破したい。
いつも前途に立ち塞がる「愛」って何?
「愛」を探す聡美に、「和子の思い出が詰まってる」と大人の愛を呟く狂児が眩しく映る。銀幕の「君の瞳に乾杯」は美男美女過ぎて、なんだか嘘臭い。そんな中、映画を見る部の部長栗山君が呟く。
「愛」とは何か与えるものらしい。
鮭の皮のシーンで聡美が長尺で驚いたのは、鮭皮を渡す夫婦の阿吽の呼吸を見て、初めて両親がお似合いの夫婦だと感じたから。本当に愛しあっているんだとリアルに思ったから。
屋上のシーンで、狂児に合唱祭で歌が上手く歌えないと告白すると「綺麗なもんしかあかんかったら、この街ごと全滅や」と明るく答えてくれた。いつも実父と比べて義父のことを嫌っていた自分が間違っていたと気付いた。外見なんて関係ない。ありのままの義父を愛そうと心から思った。
合唱部の大会の前夜、ファンシーなお守りをくれた義父に「こんなんどこで買ったん?」狂児と話すような不機嫌そうな声をつい出してしまった。まるで気にしない義父に新しい家族の関係を感じた。
思春期の男子は恥ずかしい傘は絶対使わないもの。「お父さんがくれたから仕方なく使ってる」というから形見の品?と思ったら父がいる。鶴の傘を手にした母と、その後ろで聡美の反応を過剰に伺う嬉しそうな父の顔。聡美の様子も明らかにおかしい。狂児に注意された肘も、両親との食事風景は緊張して肘はついていない。
義理の父なんだなと分かる。
いつ再婚したのか?
聡美が映画を見る部の幽霊部員になったのが2年前。天本先生が認めてくれた生徒しか幽霊部員になれない。聡美は映画に興味なさそう。息抜きの為の場所として好きなだけ。美術の準備室を間借りした映画を見る部は、心に不安がある生徒の居場所で、カウンセリングルーム的な意味があるのだろう。だから学校は天本先生が居なくなった後も、幽霊部員と部長が全員卒業するまで2年間廃部を待ってくれていた。
ちなみに天本先生は死んでいない。ごく普通の定年退職。(DVDではなくビデオテープだから、嘱託のおじいちゃん先生)
狂児の「悲しい顔して、和子の思い出やねん。と言うと大抵のこと上手くゆく。覚えてきいや〜」を聡美が実践しただけ。「亡くなった」と言った後、栗山君も意味深にチラと聡美を見ている。聡美が全財産を持ってビデオデッキを買いに行ったのも、自分の嘘で和田が思った以上に落ち込んでいることと恩師を勝手に殺した罪悪感から。
実父とは死別なのは、食卓シーンで義父の真正面目に仏壇が置いてある。瑞々しい赤と白の小菊が飾られ、蜜柑が供えてある様子から、母は亡くなった夫を蔑ろにしていないし、義父もその気持ちを大切している。再婚相手として百点満点。ルックス以外の欠点はない。
実父と死別したのはおそらく聡美が小学1〜2年の頃。(母と聡美の性格からの憶測)
「死」(ハイエナの兄貴と和子)と「愛」(和子)の話題の時、聡美は斜に構えることなく、真摯な子供のような瞳をしている。愛は良く分からないが、死だけはリアルに知っている。聡美にとって、泣き崩れる母の姿が「死」であり「愛」なのかもしれない。
聡美のスマホの待ち受けは、聡美が賞状を持って大きく口を開けて天真爛漫に笑っている。優勝したのは1年と2年の夏。天本先生が聡美と会う必要があるから、1年の夏以降に母が再婚したと考えられる。
聡美が真正面から大きく口開けて笑うシーンは待ち受け画面以外ワンカットもない。卒業の日、合唱部の集合写真で聡美は意識して笑う。まだ大きく口を開けられず微笑む聡美に、隣で和田がちょっと嬉しそう。
一緒に写真を撮りたいという和田に、聡美は執拗にベタベタとボディタッチしている。カラオケ大会で狂児に肩を抱かれて嬉しかったことを、和田で実践してみたのだろう。影の部長中川でさえ手を焼いていた和田も、聡美のボディタッチ攻撃に懐柔されてメロメロだ。聡美、これからどういう高校生活を送る気?いつか痛い目に遭いそうで心配。
小ネタ①聡美の部屋、よく見ると趣味が悪い。
サンプル寿司の時計とかたこ焼きのぬいぐるみとか青いブタの貯金箱とか小学生趣味でごちゃごちゃしている。案外、亀傘も中川に笑われるまで悪趣味と気が付かなかった?小学生の頃に実父が亡くなった事で、部屋があの日のままでフリーズしている。実父との思い出を大切にし過ぎて日常を変化させたくないのかも。
小ネタ②聡美はヤクザからジュースをやたら勧められる。
愛は与えるもの。大人が中学生に受け取ってもらえるのは冷えたジュースだけ。映画を見る部の冷蔵庫に「部員しか使用できない」と注意書きが貼られていた。天本先生は冷えたジュースで、幽霊部員を獲得していった?
小ネタ③桃ちゃん先生は合唱指導歴ゼロ
多分音大のピアノ科卒。産休育休のベテラン指導者木村先生の代わりの音楽の非常勤講師。合唱部の為にピアノを弾けることが最優先で採用。合唱指導は未経験なのは、大阪弁なのに合唱コンクール大阪大会の建物構造を全く知らないこと。合唱部員は木村先生のような指導力がないことは充分承知している。「愛やで愛」でゴリ押しする桃ちゃんに、部員は「お花畑や〜」と忖度して笑っている。これは中川の指導の賜物。中川が恐れているのはナイーブな聡美に和田が無神経に問い詰めて傷付けること。恋愛ではなく友情。連続優勝出来たのは聡美のおかげ。不調の今こそ力になって助けたいとメラメラしている。尊い。
小ネタ④なぜ母は聡美の変化に気づかない?
嘘を付き続けたせいで自業自得。とはいえ、亀柄の傘を「嬉しそうに使ってたじゃない?」は聡美も心外だろう。でも、家族といる聡美。合唱部の聡美。狂児といる聡美。聡美自身が使い分けている。母にとっては小学生の頃と変わらない甘え坊で心優しい男の子。聡美も母の前では無意識に素直な子供に変化している。本当に素の聡美は狂児といる時なのかも。食事中、肘を付いてるのもリラックスして心を開いている証。肘をわざと直さないのも、心を開いていることを狂児に分かって欲しいから。
小ネタ⑤公務員ファミリー
原作で家族が公務員だから将来公務員になりたいと聡美。いつも作業姿の義父は土木科?おそらく母も公務員。聡美が小学生の時描いたハザードマップがリビングの壁に今でも貼ってある。実父は義父と同僚で、実父の死因は自然災害時の事故なのかもしれない。食卓の目の前に元ダンナの仏壇って結構キツい。さすがに無神経過ぎる。でも可能にしたのは、大切な大好きな部下の仏壇なら亡くなってもいつも傍にいるよ気分?あの義父ならそう思いそう。良い人過ぎる。
小ネタ⑥名前
「聡美くんは聡い果実やからな大丈夫や」
ずっとキリスト教ワードが散りばめられている中、解釈すると「小賢しい罪を重ねている」的な。聡美はスラスラ嘘を付く。息をするように自然な嘘。その嘘がバレるのは狂児だけ。狂児から責められると、つい動揺して狂児の要求を飲んでしまう。カラオケ指導を引き受けるのもそのせい。嘘を付くと後から何倍にもなって返ってくると体現している聡美。