「合唱部主将の歌唱力には少々ガッカリしたが、「紅」の歌詞の奥深さに気づかせてくれた。」カラオケ行こ! Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
合唱部主将の歌唱力には少々ガッカリしたが、「紅」の歌詞の奥深さに気づかせてくれた。
山下敦弘 監督による2024年製作(107分/G)の日本映画
配給:KADOKAWA、劇場公開日:2024年1月12日
歌唱力を上昇させないと組長に恥ずかしい刺青を入れられてしまうヤクザを演じた成田狂児を演じた綾野剛は、タッパとスタイルの良さが目立っていて、とてもカッコ良かった。KADOKAWA配給ということもあってか、松田優作と動き方がとても似ているとも思った。本人ももしかして、意識している?
主人公の父親・岡晴実を演じた宮崎吐夢の、父親としての怖さや威厳が皆無な演技もとても印象に残った。笑えたし、主人公のヤクザとの関係性構築に、説得力を持たせていたと思う。
合唱部副部長(八木美樹、2006年生まれ)の面倒見の良いキャラクター設定も、とても良かった。周りの女子たちの「何してる?」に「子守」と答えていたのは、あの年代の男女の精神的な年齢差を見事に表現してして、笑えると共に野木亜紀子脚本にいたく感心。
原作には無いらしい合唱部主将の岡聡美(齋藤潤)が「映画を見る部」にも属している意味付けは、良く分からなかった。見ていた映画は、自分にはカサブランカしか分からなかったが、「白熱」(ジェームズ・キャグニー主演の1949年米ギャング映画)→「カサブランカ」→「三十四丁目の奇跡」(1947年米クリスマス映画)→「自転車泥棒」(1948年伊ネオリアズモ映画)とか。前の二つは物語と良くフィットしていたが、後の二つの物語との関連性は分からなかった。
主人公が音楽だけではなく、大人の世界への関心が高いことを示したかったのか、それとも監督/脚本家の青春時代のノスタルジーの現れなのか?とは言え、テープを壊してしまうドタバタ劇は、二度と戻らない主人公達の貴重な時間の象徴的意味合いということは理解できた。
主演の齋藤潤はオーディションで選ばれたとか。確かにあの年代らしい、大人の男への反発や憧憬を表現した演技は良かった。ただ,クライマックスの「紅KURENAI」の熱唱で、声変わり中で高音出ないのは良しとしても、合唱部主将としてはもう少し歌唱の旨さが欲しかったとは思った。熱い気持ちが伝わったところは、あっただけに。
X JAPANのツイン・メインギターのハードロック曲として大好きであった「紅KURENAI」の歌詞、特に英語部分に光を当ててくれたところは、とても嬉しかった。この曲の歌詞には正直関心乏しかったが、新ためてじっくりと見てみると、奥が深い歌詞で、巷で噂されている様に、YOSHIKI(英語部分)と早逝したらしい父親(日本語部分)の会話にも思えてくる。そして、映画で主人公が死んでしまったと思ったヤクザ成田狂児の代わって歌うシチュエーションに、とても合致したものともなっていた。この歌の選曲は、原作者(和山やま)らしく、歌詞まで登場している様、なぜこの曲だったのかは、是非知りたいところである。
監督山下敦弘、原作和山やま、脚本野木亜紀子、製作遠藤徹哉 、野村英章 、渡辺和則、 舛田淳 、渡辺勝也、企画若泉久朗、プロデューサー二宮直彦、 大崎紀昌 、千綿英久、 根岸洋之、撮影柳島克己、照明根本伸一、録音反町憲人、美術倉本愛子、装飾山田智也、衣装プラン、宮本まさ江、衣装江口久美子、ヘアメイク風間啓子、VFX浅野秀二 、横石淳、サウンドデザイン石坂紘行、編集佐藤崇、音楽世武裕子、主題歌Little Glee Monster、音楽プロデューサー北原京子、助監督安達耕平、キャスティング川口真五、制作担当間口彰。
出演
綾野剛成田狂児、齋藤潤岡聡実、芳根京子森本もも、橋本じゅん小林、やべきょうすけ唐田、吉永秀平銀次、チャンス大城尾形、RED RICE峯、八木美樹中川、後聖人和田、井澤徹、
岡部ひろき松原、米村亮太朗、坂井真紀岡優子、宮崎吐夢岡晴実、ヒコロヒー和子、加藤雅也田中正、北村一輝祭林組組長。