劇場公開日 2022年11月4日

「一人一人を丁寧に描く」窓辺にて 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一人一人を丁寧に描く

2022年11月14日
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鑑賞方法:映画館

今泉力哉作品を観るのは「猫は逃げた」に続いて二本目。人と人の関係にとことんこだわった会話劇をベースに、柔らかな光線、控えめな音楽といった自己のスタイルが確立されていることがよくわかる。
シリアスでありながら、ユーモアを感じさせるセリフのやり取り、気まずい間、テキストのモノローグと、濱口竜介の「偶然と想像」を思わせる味わい。淡々とした展開ながら、2時間20分の長尺を飽きずに観ることができた。
役者陣では、稲垣吾郎の、決して冷たいわけでなく、飄々として懐の深いたたずまいが活きている。驚いたのは、若葉竜也。大まじめにダメ男を演じて、あんなにハマるとは。主要キャストだけでなく、タクシー運転手、パチンコ客まで、登場人物一人一人を丁寧に描いていることに、好感を持てた。
ケチを付ければ、稲垣吾郎から妻の浮気を相談された志田未来が、当の二人に夫の浮気を相談するところは、さすがにあり得ない感じがした。あと、ラストの小説家の原稿は誰が出版したのだろうか…
ともかく、今泉監督に力量があることはわかった。過去作も観たいし、これからの作品も大いに期待したい。

山の手ロック