劇場公開日 2022年11月4日

「いろいろな愛のカタチ」窓辺にて さくらんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5いろいろな愛のカタチ

2022年11月10日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

不倫について考えてしまった。
たやすく誰かのように「不倫は文化だ」とは
言い切れないけれど、一番わかりやすい存在価値の認識の方法なのではと思った。
明らかに一時でもお互いを必要として求めあう。
自分はこの人に必要とされている。
ついでに心も体も満たされる。

毎日、同じことを繰り返す日常で家庭や家族の中では自分の存在価値を見出すことが難しい。
子供がいると子供は一方的に母親を必要として
求めてくるし世話しない時間の中でそのことを考えることも少なくなる。
でもその時男としての父親は存在価値を見失っているのではないか…そんなことも思ったりした。

子供のいない夫婦はどうであろう。
長期的にお互いの存在価値を認め合い、
必要として生きていくことは、二人しかいない生活の中で、どちらかが仕事で忙しかったり、家庭での生活を楽しもうと心掛けていないと継続はなかなか難しいのではないかと思ったりする。

今泉監督の作品を見始めると、急に時がゆったり流れているように感じる。
ある意味これも贅沢な時間と言えるんじゃないか。
だからといって、実際の時間はあっという間に過ぎていて、この会話劇に引き込まれてしまうのである。

そして、その会話の中に心にズンとくる
いくつかの言葉に出会う。
それらの言葉について改めて考えることができる。
それが今泉監督作品の醍醐味であって、楽しみである。贅沢、正直、無駄な時間、相談することなどいろいろあったけどまた観なおして考えてみたい。

稲垣吾郎さんは持ち前のスター性を完璧に消していて、ある意味一般的な上品な紳士になっていた。
個人的には今までの役の中で一番好きだなと思った。
そして、不倫をしてしまう人達と茂巳が唯一違う点は自分はつまらない人間だと本当に思っている上に他者に自分の存在価値を見出そうとしてないところだ。

紗衣が見ていた茂巳さんが撮った紗衣の母親の写真。
とても温かくて優しさが溢れたいい表情だった。
それを見て、紗衣が彼のこういうとこが大好きだったなって思ってるのがすごくわかって切なくなった。

玉城さん、中村さん、若葉さん、志田さん、
佐々木さん、倉さん、みんなそれぞれの持ち味が活かされてて主張しすぎない演技がこの心地よい空気感をつくれたのではと思った。

さくらん