劇場公開日 2022年11月4日

「え?今まで"好き(≒手にしたい)"という気持ちを描き続けてきた/向き合ってきた今泉監督が描く"手放す"こと」窓辺にて とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0え?今まで"好き(≒手にしたい)"という気持ちを描き続けてきた/向き合ってきた今泉監督が描く"手放す"こと

2022年11月5日
Androidアプリから投稿

手にする、手放す --- 作家主義にも似たテーマや演出方法など今泉節=命名"イマイズム"はそのままに執着しないことを描く(ex.パチンコ)。今まで"誰かを好き"という気持ちが根底にあって、ある意味ではその人を"手に入れたい"とも言いかえられるような渇望だった。今回も好きになってはいけない人を好きになったりはするけど、今回はどこか違う。今回は単独脚本で、相変わらずの空気感・作風にオフビートな笑いはあるけど今までよりもどこか大人。そして、誰かの役に立つ作品。(←指差して)ホントです。人は相手を信頼することでしかつながれないから。相談できる相手。
"葛藤があまり描かれていない"のですが…え?←今泉監督が今まで100万回くらい言われてきたであろうこと。無駄を大切に。窓際(族)とSNS。書ける才能はあるけど書かない主人公と、プロ引退を決意した有坂(若葉竜也)。ある道においての引き際も意識させられる。ある意味、今泉監督にとっての(『SW8』でバッシングを受けた経験が生かされた)『ナイブズ・アウト』のようにも思えた。その中で、今泉監督が生きる上で大切にしていそうな考え方としての少数派。あるいは監督自身も、見方によってはそうなのかもしれない。理解も共感もされないほうが楽。どうせ失望されるから。
途中、『ハイ・フィデリティ』や『ブロークン・フラワーズ』のように、小説のモデルとなった人たちを訪れては渡り歩いていく話になるのかと少し思った。例えば、今後会うこともない人のほうが話しやすいという後に、出会った人に今まで誰にも言えなかった悩み事をサラッと話しちゃったり。"全然"と言っていたのに、本人の前では"あまり"と使い分けていたり、がリアル。劇中小説「ラ・フランス」自身が、主人公と重なっていく状況や心境。君はどうしたい?打ち明ける。
例えばソダーバーグ『セックスと嘘とビデオテープ』のように、行為それ自体でなく、その後のピロートーク含め原因と結果な人間ドラマと内向きな葛藤。あと、監督自身の趣味が生かされているであろう、相変わらずの映画愛と主題歌オファーするアーティストのセンスの良さ。見る人によっては『街の上で』と似ていると思うかもしれない。『街の上で』主人公カップルが出ていたり、作品終盤で主人公と女性が朝まで部屋で過ごすけど何もなかったり。だけど違う。最後は、日本ぺっらぺら"オシャレ"作品ありがちとは違う、意味のある光が射し込む光の指輪。

若白髪だから二段階カムフラージュ!あの日の悲しみさえ、あの日の苦しみさえ、あの日の悲しみさえ、あの日の苦しみさえ…5時間エンドレス・レモン地獄。おもしろいですね、それおもしろいです。流石はオモシロのたっちゃん。

とぽとぽ