劇場公開日 2022年10月14日

「ストーリーはさておき、凄く柔らかいタッチで映像美を見せつけてくれました。」百合の雨音 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0ストーリーはさておき、凄く柔らかいタッチで映像美を見せつけてくれました。

2022年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 近々に金子修介監督を囲むオフ会が開催されるというので、止むを得ず監督の最新作を見てしまった作品が本作です。

 というものも日活ロマンポルノ50周年を記念したプロジェクト「ROMAN PORNO NOW」で製作された3作品のうちの第3弾という触れ込み。時間も短く84分しかなく、本来ならばDVDで充分でしたる
 ロマンポルノ作品「宇能鴻一郎の濡れて打つ」で監督デビューした金子修介監督にとって原点回帰したともいえそうですが、平成「ガメラ」シリーズや「デスノート」などのヒット作品を生み出してきた怪獣映画の巨匠が、ありきたりなロマンポルノ作品を今更手がけたのか疑問でした。

 過去のトラウマから恋愛に臆病になっている葉月(小宮一葉)は、憧れの上司・栞(花澄)にひそかに思いを寄せていました。一方、凛としたたたずまいを見せている栞も、プライベートでは夫の稔(宮崎吐夢)との関係に悩みを抱えていたのです。ある大雨の晩、お互いの心の隙間を埋めるかのように身体を寄せ合った2人は、一線を越えてしまいますが……。

今泉力哉監督作「こっぴどい猫」などに出演した小宮一葉が、恋愛に臆病な主人公・葉月を、俳優のほかナレーターや写真家といても活躍する花澄が、憧れの上司・栞を演じています。

 葉月の抱えるトラウマとしてLGBTへの差別が垣間見える作品でした。高校時代に先輩女子と恋に落ちた葉月は、周囲の奇異な目線に晒され、様々に陰口が語られていたのです。その結果意に反して、交際相手の先輩に「キモい」と言葉に発してしまい。先輩を死に追いやってしまったという過去があったのです。
 まだこの時代には、LGBTという概念も無く、同性愛者は異端者の扱いを受けたのでした。ところが職場で葉月と栞の関係がバラされたとき、職場の面々は葉月と栞の関係に理解しつつ、バラした葉月の同期の宮下千尋(行平あい佳)に対してLGBTへの差別だと口々に非難するのでした。その辺に時代の変化を感じたのです。
 けれども、そこから話は急転。葉月と栞は退社し、離ればなれになってしまいます。栞は夫とも離婚し、連絡先もわからなくなってしまいます。これでは千尋の思うツボ。ふたりはLGBTへの差別に屈してしまったことにはならないのでしょうか。
 一般映画としては、葉月の抱えるトラウマや葉月と栞が急接近する必然性、そして葉月と栞がなんで別れなければ行けなかったのか、突っ込みが足りません。
 結局ロマンポルノとして、ふたりのレズシーンを見せることが目的の作品だったというのが率直な感想です。
 但し、巨匠が撮影する作品だけに、ふたりのレズシーンは、凄く柔らかいタッチで圧倒的な映像美を見せつけてくれました。しかも情感たっぷりに。この辺が並みのポルノ作品とは違うところでしょう。

流山の小地蔵