「繋ぎたい手、男らしい手、嘘つきな手」手 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
繋ぎたい手、男らしい手、嘘つきな手
今年ベスト3である「ちょっと思い出しただけ」の松居大悟監督最新作。深くて、染みそうだなあと思い、ちょっと期待していた本作。ロマンスポルノ50周年記念として制作されたらしい。実はロマンスポルノ作品は初鑑賞だし、R18の映画を劇場で見るのも初めて。作品と言うよりも、この新境地に足を踏み入れることに胸をふくらませていました。そして中身はと言うと、想像通りの質感で噛みごたえ(?)のある映画でした。
今年公開された性と恋愛を上手く掛け合わせた作品と言えば、今泉力哉監督×城定秀夫監督の「愛なのに」。あの作品を頭に浮かべながら見たのですが、本作の方がよりドラマティックでリアリティのある演出が多いです。R18の恋愛映画って、どんくらい描写がキツイんだろうかと思っていたけど、案外キツくなくて、というか全くキツくなく、ロマンスポルノ初挑戦の私でもすごく見やすかった。両作を比べて思ったのが、R15とR18の違いわかんねぇ...って笑
恋愛映画としてだったら圧倒的に「愛なのに」の方が面白いし、質も高い。正直、人物やストーリーの描き不足は否めない。あと一歩ってところ。でも、性描写は流石に本作の方が美しい。ああいったシーンを見てこんな感情を抱いたのは初めて。あの映画の方がストーリーとの掛け合いは上手いんだけど、この映画はそのシーンだけ切りとってもすごく綺麗。松居大悟監督らしい演出も見られ、「ちょっと思い出しただけ」が大好きな自分にとっては結構満足。
さわ子(福永朱梨)というキャラクター。
おじさん図鑑を作るという変な趣味の持ち主であり、おじさんとばかり交際するという地味目な女性なのだけど、抱える問題やら性格やらはかなりリアル。吐く言葉は詩的で共感。魅力があるとかではないんだけど、福永朱梨の演技力があってか、なぜか引き込まれる人物だった。森(金子大地)と関わる時の笑顔や悲しみの表情も、上手く言葉に言い表せないけど、良い。
さわ子と森の描き方はなんか足りなかったけど、家族との描きはよく出来てる。妹とその彼氏のホテルでのシーンは、主人公を含めてピュアな心を失ってしまった全ての人間に直球で伝えるような、そんな意味深な場面だった。主人公と妹の違いを決定的に伝えるシーンで、複雑な気持ちに。ラストはグッとくるものがあり、どんな家族映画よりも、家族を大事にしようと思えました。
惜しい!めちゃくちゃ惜しい!
上手くいけば、今月ベスト候補だったんだけど...。3.5ですけど、割かしオススメしやすいR18恋愛映画でした。機会があればぜひ。
追記1
調べてわかったけど、福永朱梨作品2連チャン鑑賞じゃん。注目したい、いい女優さんです。これからの活躍に期待!
追記2
松居大悟監督は福岡出身の方なのに、福岡での上映が遅すぎますぞ!公開日に上映してくれよ!あと、上映館も増やしてくれ!あ、でも中洲大洋で見れたのは良かったかも。ノスタルジックな雰囲気が大好きな映画館ですし、この映画にピッタリ。松居大悟監督、福岡での宣伝活動、よろしくお願いします笑