劇場公開日 2022年9月16日

「ハッピーおじさんコレクション」手 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ハッピーおじさんコレクション

2022年10月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

幸せ

萌える

街でおじさんの写真を撮ってはコレクションするのが趣味のさわ子・25歳。
彼女はコミュニケーションが上手くいかない父親との関係に悩み、家族の中でも疎外感を感じていた。
そんな中、おじさんばかりと付き合ってきた彼女は森という同世代の同僚と関係を持つようになり…

松井監督の映画は作品によって相性がだいぶ変わるので今回はどうかと思っていたら、今まで観た中では1番だった。
原作は山崎ナオコーラ。
途中、ロマンポルノであること忘れてしまうほどの恋愛ドラマに胸を打たれる。
というか、そもそもロマンポルノ自体初めてだということに今気がついた。
シンプル過ぎるタイトル。だが、それが良い。
こんなにチケットを買うときに言うのに手間取る映画もそうないけれど…
タイトル通り「手」にフォーカスしているシーンが多く、改めて自分の手を見てみる。
手って面白い。
ある時は会社で資料をめくり、ある時は飲み会でお箸を持ち、またある時は街で恋人の頬に添え、ある時はベッドの上で誰かの陰部を弄る。
いつも裸でいつも正直。
だからその人を物語るし嘘もつく。

おじさんの魅力、分からないようでなんか分かる。
うん10年の人生経験を纏った体、それでいてどこか新鮮さも兼ね備えたかのような可愛さ。
哀愁漂う彼らの後ろ姿を枯れているという一言で片付けたくはない。
帰り道、少しおじさん観察をしてしまった。

とにかく役者が良かった。
主人公さわ子を体当たりで演じた福永朱梨。
聞いたことはあったけれど、こんなに魅力に満ち溢れた女優さんだとは知らなかった。
そして細かい演技が一つ一つ上手い。
そんなさわ子の股の間から顔を出した金子大地がどうしようもないくらい愛おしい。
ただただ金子大地が可愛い。男でも惚れる。相変わらず最低な役だけど。
そして、エンディングまで全く気づかなかったが、津田寛治さんも良かった。
似てるとは思ったが、ずっと無名の俳優だとばかり思っていた。
少しキモくて情けない感じ、俳優さんってすごい。

今回も「直感的に好きな作品ほど上手く言語化できない」現象が…
「今日行っちゃいます」ふたりの声が重なるところが好き。
妹が「おねえ、今エッチしてる!」って電話するところが好き。
森くんの作ったイタい詩が好き。
いろんなセックスをチャレンジするふたりのバカみたいな時間が好き。
さわ子と父親の関係性、そしてその結末が好き。
取り敢えず観て欲しい。
肌を重ね合わせるふたりの姿だからこそ見えてくる素晴らしさがある。
渋谷まで観に行った甲斐があった。

唐揚げ