「手は正直。嘘つきの手。」手 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
手は正直。嘘つきの手。
「父の手に抱かれていたことが、私の最初の記憶だ。」のモノローグではじまるこの映画。やはり、その言葉は、しっかりとラストシーンに意味を見出すことができる。そのラスト、思いがけずも涙が出た。それは、さわ子の気持ちがびんびんと伝わってきたからだ。感情も薄く、貞操に無頓着で、無口でつまらない女かと思わせといて、実はとても繊細な心を持っていた。ずっとセックスシーン。そりゃロマンポルノだもの。だけど、いや、そうやって自分を安売りしてきてしまったからこそ、ラストのさわ子の表情が、痛々しくもあり、嬉しそうでもあり、そこにずっとあった幸せに気付いた喜びの表情が活きてくる、と切に思った。″ハッピーおじさんコレクション"は、ファザコンゆえの歪んだ言動だったのだ。軽薄な嘘泣き男との冷めた別れのあとに、言葉少なで反応も乏しいが愛情の伝わってくる父との、短い対話。自分に興味がないと思っていた父から「行くか?さわちゃん」とかけられた言葉には、子を労わる親の愛情にあふれていた。
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