「三つ子の魂百までも?」1640日の家族 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
三つ子の魂百までも?
物語の舞台はフランスであり、
「里親」の制度や考え方は違っていても
『是枝裕和』だったら
どのように撮ったかを考えずにはいられない。
彼の好きそうな、家族の
しかも血の繋がらない関係性を
どのように料理したろうかと。
『ドリス』と『アンナ』夫妻は
二人の実子に加え、一人の「里子」
幼い『シモン』を養育している。
国からの報酬は出ているようだが、
「里子」には独立した一部屋を与えねばならぬ、との
規則はあるよう。
それが家族内にさざ波を立てたりはするものの、
関係は概ね良好。
とりわけ『アンナ』は『シモン』を
自身の子供同様、いや、傍目にはそれ以上に溺愛している。
しかし、預かりだしてから四年も過ぎた頃、
実父『エディ』から
息子を返して欲しいとの申し入れが。
妻の死を受け入れられず、育児に対してネガティブになっていた自分は
完全に立ち直ったのだ、と。
そこからが、両家にとっての葛藤の始まり。
週末の同居を手始めに、早々に引き取ってしまいたい『エディ』と、
情が深く移ってしまい、できれば手放したくない『アンナ』との相克の日々。
果たして、最後はどのような選択と相成るのか?
しかし行政の側では、
子供をできるだけ早く実父の元に戻すのがベストとの
ゴールは既に設定されている。
なるはやの履行が求められているわけで、
そこに子供や養父母の思いが入り込む余地はない。
流れに抗う行為は指弾され、公権の介入さえ招いてしまう。
そうした始終を、本作は幾つものエピソードを重ねながら
少々センチメンタルに語る。
観ていてほだされ、或いは里親の側の心情にシンパシーを重ねるシーンもあリはする。
しかし、全体的には冗漫な場面が多く、
百分ほどの短い尺であるのに、時として長さを感じてしまう。
勿論、日々の描写が家族の関係性を理解させるのに必要不可欠とは知りつつも、
全体的に幼い子供視線のイベントが多いことから
そのように感じてしまうのかもしれぬ。
冒頭に述べた、
『是枝裕和』だったら?との想いは、
まるっきり、そのことの反映。
異なる感慨を鑑賞者に抱かせてくれるのではないか、と。
とは言え、本作の最後のシークエンスは秀逸。
幼子の順応力の高さと嫋やかさを見せられる。
去る側と去られる側では、
どちらにより思いの丈があるのだろうか?