「お疲れさま、インディアナ」インディ・ジョーンズと運命のダイヤル うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
お疲れさま、インディアナ
公開前のハリソン・フォードや制作陣のインタビューでは「インディの老いを表現すること」が強調されていた。
そうは言ってもいざ本編が始まればインディはバリバリと冒険をするんだろうと楽観視していた。また、チラシなどのアオリで「ハリソン・フォード演じる最後のインディ」という書き方をするということは「インディ・ジョーンズ」というIPそのものはまだまだ使い続けられるものなのだろうと予想していた。
だが劇場で本作を観ると、前述のインタビュー通り「歴史にロマンを感じる時代は終わっている」ことが強調され、インディも冒険や歴史探求へのモチベーションを失っている。
インディの講義をうっとりしながら聞いていた女子学生達はいないし、近づくだけで苦労するような秘境の遺跡も登場せず、特撮技術を使ったアクションシーンの多くもCGIに置き換えられている。本作でインディの相棒となるヘレナがダイヤルを求める動機も、インディがダイヤル争奪戦に参加する理由も、過去作とは明らかに異なる。
本作へ過去シリーズ並の手に汗握る熱い冒険を期待していると寂しさを感じることは間違いないが、ラストは過去4作をかけてインディ・ジョーンズの冒険と人生を追ってきた人間には味わい深いものだった。本作はただの続編でも世代交代でもなく、本当の「終幕」だった。
近年の大作シリーズが映画やドラマで大量の派生を産み希薄化していく傾向を見ていると、「インディアナ・ジョーンズ」という存在を極力オリジナルメンバーの手で以てヒーローから一人の生身の男に戻し、シリーズにきっちりと一つの幕を下ろすことができるのはとても贅沢な事のように思える。
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