「線路に乗った先の、とてつもない深さ。」インディ・ジョーンズと運命のダイヤル oilonさんの映画レビュー(感想・評価)
線路に乗った先の、とてつもない深さ。
とにかく凄いの一言。
ジェームズ・マンゴールドの凄さももちろんある。
すごく綺麗な脚本の増築美。
寸分違わないフリとオチの連続。
その中で、
絶対的に存在するインディー・ジョーンズ的ファンタジー
どういうことだよ!という時空の超越
(これはハリソンフォードにも当てはまる)
戦争と老いがテーマなのかなと。
クリスタルスカルはどちらかといえば伝えたいことを鋭利な形で伝えてきたと思う。
宇宙人の存在を醸し出し、情報過多の時代に警鐘を与える、まさに警鐘。鐘が鳴り響いていた感じ。
しかし今作はどうだ。
インディが、引退間際のインディが、優しく物語ってくるような感じ。
しかしその言葉はなぜかとてもつもなく重い。
それでいて、過去なんか見ていない。
見据えているのは今その瞬間。
戦争を経験しているからこそ、一義的に悪と正義を定義しつつ進んでいるようなストーリー。
しかし、実はどうか?
見方を変えてみると…
最終的に、語られるのは、今にしかない愛。
生きていれば、全身が痛い。
「痛くない場所」にキスをする。
こんなの、たかだか30年少ししか生きていない自分にはわからないよ。
キスというものさえも、ただそれが愛の表現なのか?そんなことさえ問われているような。
こうやって、人生ってなんなんだろう?っていうのを奥底に隠して、遊び心に隠して喋りかけてくるの、スピルバーグにしかできないんだと思う。
戦争の話題は多分ルーカスなのかな。
でもこれまで見てきたものと語り口が全然違うの。
2人とも優しいおじいちゃん。
そんな2人を最大限にリスペクトしたマンゴールドの作品。
007シリーズの最近のものもリスペクトが凄かったけど、今回はその上をいく。
かっこよさとダサさと、そこに新しく老いを乗っけた運命のダイヤル。
戸田奈津子さんの字幕もすごかった。
エウレーカの訳を、なぜ帰ってきたとしたのか、そこだけ聞きたい。
見つけた!ではないんだもの。
それはズルい。
スクリーンの中に入りたかった。
素敵な時間をありがとう、ルーカス、スピルバーグ、ジョン・ウィリアムス、ハリソン・フォード、マンゴールド。