「アラ傘(傘寿)ハリソン、ファンのために頑張る」インディ・ジョーンズと運命のダイヤル ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
アラ傘(傘寿)ハリソン、ファンのために頑張る
60台半ばのハリソン・フォードが19年ぶりに頑張る姿にどこかハラハラした前作から16年。設定上70歳のインディを演じるハリソンは撮影時御年79歳。あまり年齢のことは言いたくないが、さすがに心配になる。
オープニングからいきなり、1944年設定の若いインディ(設定上38歳)。「アイリッシュマン」でデ・ニーロやアル・パチーノを若返らせた技術、ディエイジング(モーションキャプチャーを使わず、俳優の過去作の映像データを元に若く加工する)でバキバキに決まった姿で、動きも軽やかに、いきなり「ゴールデンカムイ」終盤さながら(順序としてはゴールデンカムイのような漫画の方が映画の影響を受けた側だが)の活劇を繰り広げる。
でも、顔はともかくアクションはどうやって撮ったのだろう、どこまでハリソン本人がやっているのだろう、ここはボディダブルかな……などと雑念が入る。もちろん、今の時代何とでもやりようはあるのだが。マッツ・ミケルセンも若返っていた。
1969年に移ってリアルハリソンになってからも、お馴染みの展開、お約束のアクションが続く。意外性はないが、それはシリーズ最終作にあってほしい安心感のようなものでもある。大小いろいろツッコミどころはあるものの、それはシリーズ全体に言えることで、口にするだけ野暮というものだろう。ハリソンが老骨に鞭打って、シリーズを締めるために頑張っている姿を拝めることが肝心なのだ。
タイムリープ先の古代に残りたがるインディを見て、若い頃なら学者の分別が働いてそんなこと言わなかったろうに、老い先短いとこういう気持ちになるんだなと思った。
アクションの迫力を補うためか、ヘレナ役のフィービー・ウォーラー=ブリッジがかなり体を張っていた。誠実そうな見た目に峰不二子チックなリアリストキャラだが、終盤突然デレたのは玉に瑕。
アントニオ・バンデラスは、正直観ている最中は分からなかった。最近のバンデラスを別の映画でも観たのに、ふた昔くらい前の濃厚セクシーなイメージを更新出来ないでいる。
マッツ・ミケルセンは軍服姿もりりしくて、相変わらずかっこよかった(個人的には、マッツを観に来た)。ちなみにユルゲン・フォラーは、ヴェルナー・フォン・ブラウンというドイツ人の工学者がモデルだそうだ。彼はナチスドイツでミサイル製作を指揮していたが、戦後アメリカに亡命し、NASAでロケット開発に携わったという。
ヒトラーのせいで戦争に負けたからタイムリープして総統を殺すと言っていたが、ヒトラー以上にナチスの理想を実現出来る人材の当てがあったのだろうか。そこはまあ、本作のノリとしてはどうでもいいか。
ついでにもうひとつ余談だが、「アンティキティラ島の機械」は実在するらしい。1901年にギリシャのクレタ島沖海底から3分の1だけ回収され、ずっとオーパーツ扱いだったが、数年前にUCLの研究プロジェクトによりデジタルモデルが完成している。実物を製作する技術はまだ謎で、ロストテクノロジー的存在のようだ。
アルキメデスのミイラがフォラーの腕時計を着けていたのに、ラストでアルキメデスがダイヤルと一緒に腕時計を返そうとしていたのは齟齬がある気がしたが、インディが気絶した後に、結局腕時計だけ彼にあげたということかな。
Wikipediaを見ると、2008年の前作の公開前後には既に本作を作ろうとする動きは始まっていたようで、それが各段階でなんのかんのあって遅れに遅れた結果今日に至ったようだ。シリーズのファンには何年間が空こうががあまり関係ないのかもしれないが、個人的にはアクション大作は主役が少しでも若いうちに撮っておいてほしい気がした。何だか、自分の祖父母や親が年甲斐も無く体力的な無茶をするのを見ているようで、ハラハラして落ち着かないのだ。
私はシリーズものであっても単品としての出来をつい考えるのでこういう感想になってしまうが、シリーズ愛を前提にしたご祝儀的高評価のほうが、製作者の意図にも沿うものなのだろう。ファンの同窓会という前提があってこそ輝く作品。
コメントありがとうございます。
共感は頂けませんでしたが、シリーズ作品の評価の考え方に共感してもらい、ありがとうございます。
シリーズ作品の場合、シリーズ全体のコンセプト、世界観を理解することが重要ですが、長いシリーズの場合、それが時代に対応して軌道修正される場合があります。
また、作り手の意図したコンセプト、世界観が観客側と徐々にズレてくることもあります。
その点、本シリーズは、世界観がシンプルなので、長いシリーズになっても作り手と観客の世界観はズレません。本作の長所だと思います。
今後、本シリーズを凌駕するような、斬新な世界観、個性的な主人公からなる冒険活劇が登場することを期待しています。
では、また共感作で。
ー以上ー
仰る様に、同窓会という感じは確かにありますね。
それに加え、観客の人生を振りかえることができるというメリットがあります。スターウォーズも同様ですが、本シリーズは長いシリーズなので、本シリーズと共に人生を歩んできたという思いが強いです。
仰る様に、本来は、シリーズ作品であっても、作品単位として評価をすべきだと思いますが、本シリーズの世界観は、5作品で共通なので、シリーズ作品としての基礎評価点にシリーズ作品単体の評価点を加えるので、基礎評価点が高いと作品全体の評価点は高くなります。
逆に、スターウォーズでは、よく見られた傾向ですが、こんな作品はスターウォーズじゃないとなると、基礎評価点はゼロになるので、作品単体として観るとそんな悪い作品ではないのに、作品全体の評価点は低くなります。
本シリーズ、ハリソン・フォードは本作で卒業ですので、シリーズとしても最終作にして欲しいです。
シリーズ継続は可能かもしれませんが、本シリーズは、ハリソンフォード、ジョージルーカス、スピルバーグが生み出した唯一無二の冒険活劇なので。
なお、本作の冒頭は1944年設定ですが、その後の1939年設定シーンが印象的だったので、私のレビューでは1939年の方を採用させて頂きました。
では、また共感作で。
ー以上ー