劇場公開日 2022年8月12日

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「明るいビーチサウンドの裏に隠された天才の苦悩」ブライアン・ウィルソン 約束の旅路 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5明るいビーチサウンドの裏に隠された天才の苦悩

2022年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

中学生の時にサーフィンを少しだけかじって以来のファンで聴いていたのは60年代の明るいビーチサウンドのみだったが、作曲したブライアン・ウィルソンがあれほど純粋で繊細で非常に脆くいつも壊れるギリギリのところに居続けている人だったとは思ってもみなかった。(精神科医に洗脳されたり、ドラッグやアルコール依存性だったという事は映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー 」観て知っていたが)
インタビュアーの気の使い方が如実にそれを物語っているように思う。

劇場で左右の席に座られたのは奇しくも両方とも自分より5、6才上の白髪のロン毛おじさん達で如何にも元サーファーという感じだった。(右側のおじさんはずっと奥さんと会話しておりちょっと迷惑だったけど)
幾つになってもあのエレキサウンドとハイトーンのコーラスワークは聖書やゴスペルのように感じ大切な存在なのではなかろうか。

ブライアンはビートルズをライバル視していたとあるが「天才集団」対「一人の天才」、また米国以外ではビーチサウンドという限定的な世界観のイメージが強いビーチボーイズではビートルズと比肩するほどの世界的成功はなかなか難しかったのだろうとは思う。

映画はエルトン・ジョンやブルース・スプリングスティーンなど有名ミュージシャンのインタビューが所々に差し込まれるのだが、同じロックではあるが音楽性が全く異なるように思えるスプリングスティーンがブライアン・ウィルソンのサウンドにあれほどの敬意と強い思い入れを持っているというのには少し驚いた。

大筋としてはインタビュアーと車に乗り思い出の地を音楽をかけながら巡って行くといったドキュメンタリーになっているが、自分も2000年前後に5年ほど南カリフォルニアで生活をした事があり、エルセグンド、ホーソン、マリブ、パロスバルデスなどの地名に懐かしく感じた。

個人的にはもう少し当時のライブ映像を見せてもらえたら良かったのにと思ってる。特にFun Fun FunとかHelp Me, Rhondaとかは観てみたかった。

常々ビーチボーイズを神と公言して憚らない萩原健太が翻訳を監修しているのも作品に厚みが出て良かったと思う。

カツベン二郎