「つまるところ男たちは皆、同じというメッセージ!」MEN 同じ顔の男たち 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
つまるところ男たちは皆、同じというメッセージ!
女なら皆さん経験があると思うけれど、
男は我儘。
女なら簡単に我慢できることが出来ない動物だ。
卑近な例ばかりで恐縮だが、
男はなぜ昨日の残り物を食べないのか?
男はなぜテレビの真ん前に座るのか?
そして当然のようにチャンネル権を持つ。
男は男に生まれるのではなく、男になる。
乗り物でも一番良い席に座る、
(中には我儘(甘え)を拒絶すると報復に出る男がいる)
ハーパーの夫のジェームズはその特徴的な一人である。
心の傷を癒す目的で、ロンドンから車で4時間離れた田舎町の古い洋館に
2週間滞在することにしたハーパー(ジェシー・バックリー)。
彼女が遭遇する“同じ顔の男たち“の恐怖を描いたサスペンススリラーです。
洋館の趣も格調高く、撮影も美術も一級品。
トンネル内に反響(こだま)する音や、
女声のスキャットハーモニー。
そのあまりに美しい緑の田園風景に《異物》が飛び込んでくる。
裸体にペインティングした男だ。
ハーパーは夫のジェームズを事故か自殺で亡くした過去を引きずる女性です。
喧嘩の理由は明かされませんが、突然ハーパーを殴って壁まで振っ飛ばされた
ハーパーは激怒して夫を怒鳴りつけて絶縁を言い渡します。
謝罪を全く受け付けない。
傷ついた夫は、上の階から転落して一階の柵に突き刺さって死ぬのです。
保養に来たのに、庭に現れる全裸で髪のない醜い男。
散歩中に出会った少年は黄色い髪の女の仮面を被っています。
そして「クソ女」と汚い言葉でハーパーを罵るのです。
教会へ行って悔恨から泣いているのを陰で見ていた司祭は、
「あなたが夫を許さなかったせい」とハーパーを責めるのです。
そしてハーパーがバーを訪れる。
管理人のジェフリーが、
バーのオーナーが、
常連のが、
警察官が、
みんな同じ顔をしているのだ。
(なんと裸の男と、仮面の少年も、ロリー・ギニアが一人で演じ切ったのです)
(驚愕の表現力ですね)
アレックス・ガーランド監督は古くは、ダニー・ボイル監督の問題作
「ザ・ビーチ」の原作者として知られ、
「エクス・マキナ」の監督や「28日後…」の脚本で知られる。
アレックス・ガーランド監督と脚本を担当した本作は、
アートのような美しさと、不可解な恐怖が交差する、
「悪夢」のような作品。
トラウマに苦しむジェシー・バックリーは、ホラー映画の主人公にしては
強靭な精神力で、【男に負けていない女】を熱演した。
裸の男の造形は、
時に傷だらけで、刃物傷、釘を打ち込まれ、
遂に男は は、頭に楔の冠のように木々が茂り、
血だらけの赤児を出産する。
最後には夫のジェームズが産み落とされる。
ラスト20分の驚愕の展開を含めて、
面白い作品だった。
琥珀糖さん
フォロー、コメントをいただき非常に光栄です。またコメントいただいた2作品は個人的に思い入れも深く嬉しかったです。
琥珀糖さんのレビューは文学、音楽、地理まで豊富な知識の上にあり理解が深く、また自分の観ていない作品でも空気を感じることができ、鑑賞の指針とさせていただいています。今後とも宜しくお願い致します。
共感を有り難うございます。
おっしゃられて改めて、ロリー・ギニアが一人で演じ切った、その「驚愕の表現力」に感嘆します。と同時に得体の知れない可笑しみまで感じてしまいます。もう笑うしかない…みたいな。
そして私はガーランドが、あの「ビーチ」の原作者とは知りませんでした。本当に悪夢の名人かも知れないです。