「【”被曝の実態を語れるのは、被曝者だけ”と長崎の元少年郵便配達員で、世界に核廃絶を訴えていた被曝者の男性は言った。英国男性の心意気が沁みる。が、現代世界の状況に、焦燥感を覚えたドキュメンタリー作品。】」長崎の郵便配達 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”被曝の実態を語れるのは、被曝者だけ”と長崎の元少年郵便配達員で、世界に核廃絶を訴えていた被曝者の男性は言った。英国男性の心意気が沁みる。が、現代世界の状況に、焦燥感を覚えたドキュメンタリー作品。】
ー 今日は、広島に原爆が落とされて77年目の日である。
そして、9日には、長崎に原爆が落とされた。それにより、無辜なる日本の民の多くは一瞬にして、命を奪われた。
辛うじて生き残った長崎の少年郵便配達員だった谷口スミテルさんの様に、長年放射能の影響に脅かされて来た方々も多数いらっしゃるのは、周知の事実である。
が、現代社会の情勢を見ていると、人類の滅亡は寸前まで来ている気がする・・。
◆感想
・今作が、他の原爆ドキュメンタリーと明らかに違う点は、英国の元空軍大佐で、ジャーナリストだったピーター・タウンゼンド氏が遺した小説を基に、彼の娘のイザベルが、父の足跡を追うという構成である。
英国人元空軍大佐が、日本人被爆者と交流を深めていた事実を軸に展開される物語が、イザベルが鎮魂の想いを抱きながら、父の足跡を追う抒情的な雰囲気を醸し出している。
ー それにしても、ピーター・タウンゼンド氏が、マーガレット王女と恋仲になっていた事は知らなかった。そして、彼がその恋が、成就せずに世界へ旅立った事も・・。
随所で語られる、ピーター・タウンゼンド氏が如何に人道的な男性であったか・・、と言う部分も作品に風合を与えている。-
・16歳の時、郵便配達中に被爆し、背中に大やけどを負いながら、生涯を賭けて世界に核廃絶を訴える故、谷口スミテル氏の姿は、尊崇でさえある。
そして、ピーター・タウンゼンド氏はそんな彼の姿に、感銘を受けて取材し、小説にしたのだ。
ー 若き、谷口スミテル氏が背中に大やけどを負い、治療してもらっているシーン。
よくぞあのような映像が残って居たモノだ、と驚くとともに、ロシアと中国を統べる男二人と、その側近には、正座させて観させたいシーンでもある。-
・来日したイザベルは、父が遺したボイスメモを頼りに、谷口さんの家族や関係者に話を聞いて回る。そして、長崎平和公園や、浦上天主堂など、原爆の爪痕が残る場所も、丹念に訪れる。
ー 被曝したキリスト教徒の人々が、”死ぬなら“浦上天主堂の中で・・”と思いながら途中で息絶える話や、谷口さんが、世間の偏見の眼の中、漸く結婚し家族を作り、海水浴に行った時に、彼の背中のケロイドを見て子供たちが泣き出した・・。そして、谷口さんが子供たちに話した言葉など、胸に沁みる。-
<毎年、夏になると「黒い雨」「野火」「ひめゆりの塔」と言った反戦映画が、ミニシアターで上映されるが、戦争の悲惨さを後世に伝えるためにも、大切な事であると思う。
きな臭い世の中の中、戦争を実体験した方々の存在は、確実に減っているのであるから・・。
今作は、現況下を見ても未来を担う子供たちに、平和な世界をどう残すか・・、という重い課題を静かなトーンで、観る側に問い掛けてくるドキュメンタリー作品である。>
NOBUさん、コメントありがとうございます。
ピーター・タウンゼントの原語本
「THE POSTMAN OF NAGASAKI」 は入手難しそうですが
翻訳本なら新品で購入できそうですよ。
いくつかのサイトで検索し、ヒットしました。
「ナガサキの郵便配達」(ISBN:9784915743160) 889円(税込)