「一応、趣旨は理解しなくもないのだけど…(減点対象でネタバレを含みうるので注意)。」千夜、一夜 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
一応、趣旨は理解しなくもないのだけど…(減点対象でネタバレを含みうるので注意)。
今年301本目(合計576本目/今月(2022年10月度)15本目)。
※ 映画館トラブルで上映が3~5分遅くなっているのか、オープニングが変なところからはじまっているので、その部分は除きます(エンディングロールは正常に流れている)。
一言でいうと「雑だなぁ…」という印象です。
ストーリー的には他の方が書かれているものと同じだし(映画なのだから当たり前)、そのストーリーの趣旨も「待ち続けること」に主眼があたっているのは当然理解はできます。
一方で、このサイトや映画内でもちらっとだけ「失踪者リスト」という名称は出ますが、それが何であるのかが明示的に示されず(まぁ、大人の事情…)、さらにエンディングロールまでみると???な状態になっているので、法律系資格持ちはかなり混乱します。
というより、この映画、実はちらっとだけ「法テラス」のポスターが見えるのですが(過疎地まで弁護士をはじめとした法律の相談ができるという趣旨の「実在する」制度)、それも踏まえてみると、何がどうなっているんだろう…という気がします。
-----------------------------------------
(減点1.2/趣旨が(法律的に)理解しがたい、ぼかした結果よく分からない部分等)
・ まず、この映画には「2組のカップル」が出ます。1つ目は2年待っているという女性、もう1人は30年待っているという女性です。そして「失踪者リスト」という名称から、おそらく想定しているものは「あれなのだろう」ということは理解できても、固有名詞を出すと問題になるのか出ていない…という状況です。
一応にも「固有名詞を出していませんが、現在の日本の国交に配慮したものです」などあればまだ理解もできるのですが、それもないので、民法などを基準にしてみることしかできないのですよね…。
すると、2年帰ってこない、というだけでは裁判上の離婚を請求することはできません(民法770条)。「3年以上生存が明らかでないとき」に該当しないからです。一方、30年というのもきわめて極端ですが、裁判上の離婚は強制ではない(親族相続などは、当事者の意思が尊重されるので、悪用しない限り強制的な対応はとられない)ものの、年金関係など、他の制度と組み合わせると理解が破たんしてしまいます(なお、リアル世界では、このように「実際の参照している事件」のようなケースでは特別法があり、年金関係は別の規定が存在します)。
※ ほか「悪意の遺棄」というのもありますが、判例上「悪意の遺棄」というのは、「常時介護が必要な配偶者を放置する」といった積極的なケースが該当します(「悪意」は法律上は特殊な用法をしますが、ここでは普通の日本語の意味)。
そして前者のほう…は「裁判上の離婚」をへて(この部分は明示的に発言がある)、新しい再出発をしている(映画内では再婚しているっぽい?まだ準備中?)のですが、もとの裁判上の離婚が成立しない以上、再婚が成立するかも微妙です(裁判上の離婚は、協議離婚における「条件を満たしていないものは受理してはいけないが、誤って受理したものは有効として扱う」(765条)の規定を準用していないため(771条))。
※ 765条(誤った受理の禁止、誤った受理の有効性)を裁判上離婚で準用していないのは、「裁判所は間違った処理をしない」という前提があるから。
すると特にこちらの新カップルは法律上非常に怪しい状況になってしまい(法の想定する範囲を超越してしまう)、どうするんだろう…というところです(どうにもこうにも、こういう事例がリアルで存在しないので、どうなるのか謎)。親族相続というものに無効・取り消しというものはなじまないためです(さらに法律関係をややこしくしてしまう)。
※ なお、結婚離婚その他関係なく、すべてに適用される「失踪者」の扱いは、7年(普通失踪)か、1年(船舶の沈没、戦地に赴いたものなど、特別失踪)です(民法30条)。
※ 「船舶の沈没」は、そもそも日本でできた最初の民法から存在するように、当時は船舶や飛行機がそこそこ沈没していた(同様に「戦地に赴く」など、今だとちょっとあり得ないような規定も存在する)ように、「文言通りには読まない」(この「不審船」が「船」だからといって適用はされない。そうだとすると、連れ去り方法が何であるかによって普通失踪か特別失踪かが変わるという珍妙な状況になるため)のです。
・ 映画内では明示的に名称こそ出ないものの、この映画でいう「失踪者リスト」という名称や、「不審船」などが想定する国が何であるのかは明らかです。にもかかわらず、エンディングロールで「韓国語指導・だれそれ」というのはどうなのか…(朝鮮語(便宜上の名称。ここでは韓国に接する「北側の国」を指す))というところです(ある程度韓国映画をみていれば、韓国語と「その国の言語」に差異があることは常識扱いのため)。
まさか「韓国からの失踪者」というように見るのは無理があるし…。
-----------------------------------------