劇場公開日 2022年10月7日

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「大切な人の不在とどう向き合えばいいのかを問うシリアスな作品」千夜、一夜 最凶線さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大切な人の不在とどう向き合えばいいのかを問うシリアスな作品

2022年10月7日
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まるであみんの「待つわ」を地で行くかのような雰囲気の作品でした。

ただそんな生易しい話なんかではなく、生きてるかどうか分からない人を待ち続けることは静かに人の心を壊してしまうということを思い知らされる作品でした。

表面上は平穏な暮らしをしてるように見えて、実は内面は取り返しがつかないくらい壊れてしまっている登美子を演じた田中裕子さんの静かな狂気の演技が凄まじかったです。

特に田中裕子の家に泊まることになった尾野真千子の元夫が、架空の夫と会話する田中裕子を目撃してしまうシーンがスゴすぎました。
その姿を見て尾野真千子の元夫が自分がしたことの重大さと取り返しのつかなさに気付く感じがとても染みました。

大切な人が失踪するという同じ境遇でありながら、ずっと待ち続けることに疲れて区切りをつけようとする奈美という対照的なキャラクターを演じた尾野真千子も素晴らしかったです。
尾野真千子の元夫が、尾野真千子が新しいパートナーと一緒に暮らすアパートを訪ねるシーンなんかは修羅場すぎて見てられないくらいの緊迫感でした。

あと登美子にずっと想いを寄せ続ける漁師を演じたダンカンさんも名演でした。
全く関係ないんですけど、ダンカンさんが画面に出る度に心の中で「ダンカン、バカ野郎!」って言っちゃうクセを直したいって思いました。

最凶線