劇場公開日 2022年10月7日

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「失踪夫を待つ女の重厚な映画」千夜、一夜 たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0失踪夫を待つ女の重厚な映画

2022年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

飯田橋・神楽座での試写会にて鑑賞。

田中裕子主演映画に尾野真千子が共演というだけで必見の映画。
実際に観てみると、じっくりと長回しで登場人物をとらえたカメラが切り取る風景は見事だが、物語は実に重厚な蒸発した夫を待つ妻のドラマ。

ある離島で突然失踪した夫を30年間にわたって待ち続ける妻(田中裕子)は、「なぜ夫がいなくなったのか?」・「近隣某国に拉致されたのではないか?」・「生きているのか?死んでしまったか?」……などなど様々な思いを抱きながら過ごしている。

また、結婚した夫が2年前にやはり突然の失踪をしてしまって、看護師の仕事をしながら待っている女(尾野真千子)が「30年前に夫が居なくなった女性がいる…」と田中裕子に紹介されて、二人の交流が始まるのだが、後半では二人を対照的に描いていく物語とその自然な演出は素晴らしい!

自分が学生時代に田中裕子の公開作を初めて観たのは多分『天城越え』を松竹試写室で観た時だったと思うが、まだ学生だったが素晴らしい女優を追っかけて、作品を次々と名画座で過去作を追いかけ、公開される新作欠かさず観ていたのは青春真っ盛りのこと。
新宿松竹での舞台挨拶の際は、出待ちして直筆サインを有難く頂戴して、いまだに額に入れて飾ってある宝物。

あの頃から40年ぐらい経った現在、この映画でも、やはり素晴らしい演技を見せてくれる田中裕子だが、狂気すら感じる凄さに背筋が凍るような姿も映し出す久保田直監督による見事な佳作。

<映倫No.123125>

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たいちぃ